最後のCDプレーヤー
もはやCDプレーヤーの時代は終わったのかも知れない。


【CDプレーヤー故障】
 10年くらい前に買ったデノンのCDプレーヤー DCD-1650AZ の調子がおかしくなってきた。

 ディスクを入れても「かーしゃ、かーしゃ、かーしゃ・・・」と何か引っかからないで空回りしてるような音がして、ディスクを認識しない。

 何度も何度もロード・イジェクトを繰り返しているとたまに引っかかって認識に成功する。こうなれば後は普通に再生できる。

 が、この成功するまで百回くらいはロード/イジェクトを繰り返さなければならなくなってきた。メカがへたってきてるのか? というワケで、今のを処分して、新しいのを買おうかなと思った。


 さっそく新しいCDプレーヤーを物色開始。上記デノン機の何代か後の後継機も出ているのだけど、この最新型、俺的にはイマイチ食指が動かない。あと、CDプレーヤーでそんなに音が変わるもんかねぇ?という基本的な疑問が。

 以前PS3でCDを再生したのや、ウォークマンから再生したのと聴き比べてみた事があったけど、ほとんど違いが分からなかったんだよねえ・・・。スピーカーの違いはすぐ分かったけど・・・。

 ピュアオーディオ系の専門雑誌なんかでは批評家が「音の立ち上がりが」とか「スピード感が」とか色々書いてるけど、そんな言うほどは違わないような気がした。

 たぶん、あるレベル以上の物になれば、ウチのステレオと俺の耳の前ではほとんど変わらないのだろう。じゃあどうして安いCDプレーヤーを買わずに、わざわざ10万円以上もする機種を買うのかと言えば、それは趣味だから。

 趣味ってそういうモンだよね?(^_^;


【CDプレーヤー物色】
 ピュアオーディオ系の雑誌を集めて、CDプレーヤーについての記事を読みまくった。こういう時が一番楽しいやねぇ〜(^_^;

 でもこの手の記事って誉めるだけの内容が多く、あまり選定の参考にはならなかったりする。

 今だとネットで検索して、個人の意見を探したりできるけど、複数のプレーヤーを比較できるような環境にある人はそんなにいないと思われ、結局は批評家の意見に頼るしかないのが現実。

 俺としては、例えばアキュフェーズみたいな、一貫して良い物をコツコツ作り続けているメーカーの物を買いたいのだが、アキュフェーズの製品って一番安いのでも30万とかしたりするでしょ? さすがに買えません(T_T)

 パソコン用のCDドライブとかDVDドライブと言えばパイオニア製のが評価が高いが、CDプレーヤーとしてはそれほど評判高くない感触。どうもプレーヤーとしての音質は、ドライブメカよりも、アナログ回路で音が決まってるっぽい。(←当たり前)


 何だかんだで結局、候補は下の5機種という事に。

 ・ デノンの DCD-1650SE
 ・ ソニーの SCD-XA5400ES
 ・ ヤマハの CD-S2000
 ・ マランツの SA-15S2
 ・ パイオニアの PD-D9 Mark2


デノンの DCD-1650SE
 この「1650」シリーズは長岡鉄男氏が生きていた頃から続いてる名門で、雑誌では賞も取ってる。たぶんこのクラスでは一番の売れ筋商品。評判も悪くはない。が、今回故障したヤツと同じ系統なので、せっかくなら別系統の物を買いたい気分。


ソニーの SCD-XA5400ES
 現状ソニーの最高機種だが、最高機種なのに実売12万円程度。マニアとしてはこの値段がまず不満。型番に「ES」を付けるならもっと高くてもいいのに。

 あと、この値段なのにバランス伝送端子があるとか、HDMIに対応してるとか、妙に高機能なのがまた不安。そしてデザインの趣味が合わないのが一番の問題だったりする。色も黒だけってのも・・・。


パイオニアの PD-D9 Mark2
 これも色が黒しかない。また、デザインもかなりクセが強く、好みが分かれる所。


ヤマハの CD-S2000
 評判は悪くないようなのだが、ヤマハはしばらくピュアオーディオ製品を作っていなかった。メーカーとしてブランクが長いという点は不安。


マランツの SA-15S2
 音質の良さを評価する声が多いが、今までマランツの製品の購入を考えた経験が一度も無かったので、よく分からない。


 この手の商品選びではよく「店頭で聞き比べて」と言われるが、正直言って、プレーヤーレベルだと店頭で聞き比べてもほとんど違いが分からないし、分かったとしても環境が違えば音も変わるので、店頭での正しい判断はまず不可能だと思うのだ。

 以前PC用のスピーカーを買った時、店頭で音を聴いて「よし!」と思って買ったのだが、家に帰ってから聴いたら全然ダメで(音色が趣味に合わず)、即ヤフオク処分した経験もある。

 つまり、音での判断は無しで選択しなければならない。っつーか、上で書いたように、たぶん音はそんなに違わない。

 となると、あとは見た目と信頼感?


【橋がつく地名】
 「東京ではヨドバシ。大阪では日本橋。仙台では五橋(いつつばし)」という言葉があるとか無いとか。

 仙台の五橋という所にけっこう大きなピュアオーディオ専門店「仙台のだや」があり、ステレオ買うならここ、という事になっているそうな。かなりマニアックな製品まで置いていて、音を出して聞き比べができるという。(でも店舗情報をよく見てみたら、住所が五橋じゃないぞ。あれ?(^_^;)

 いつもなら仙台ヨドバシに行くところだが、今回はまずこの店に行ってみた。店は昔からあるオーディオ専門店という感じの店。団塊の世代向けのピュアオーディオで少し盛り返したとはいえ、この不況。かなり厳しいんだろうなぁ・・・。

 商談中にコーヒー出してくれたりサービスが良い上に、展示の品揃えはおそらく東北随一と思われる。売値も安いらしい。デノン、パイオニア、マランツ、ヤマハ。全部音が出る状態で並べてあった。

 専門店だけあって店員も慣れたもので、さっと音楽CDをかけて「こっちがマランツ」「こっちがパイオニア」などと聴き比べにつきあってくれた。

 さっそくマランツとパイオニアを聴き比べてみたが、ざっと聴いた感じではほとんど同じ音にしか聞こえない。どちらも良い音を出している。が、しいて言えば、パイオニアの方がフォルテの音がキツい感じ?

 ヤマハの物もあったが、こいつはトレイの薄さとか、スイッチのメカとか、ちょっと私の趣味に合わない感じ。(ヤマハらしいと言えばいかにもヤマハらしいデザインだ)

 SACD対応なので、ディスクを入れた際に認識するまで一呼吸二呼吸ある。この時間の長さが気になったので各機比べてみたが、ほとんど同じだった。

 マランツの SA-15S2 は値段を尋ねてみたら、事前にネットで調べた最安値とほぼ同じ。ヨドバシでの値段よりかなり安かったので、ここで即決。


【納品】
 2日後、マランツのCDプレーヤーが納品された。箱から出してみてまず「重い!」。そして「大きい!」。

 重量としてはデノンのと同じくらい(13.5kg)なのだが、筐体の造りは上を行っている。また想像以上に奥行きが長く、大きいラックじゃないと収まらないかも。

 天板も底板も「コンコン」と固い音。正面のスイッチ類もやけに凝った高級感漂う造り。全体が「堅いかたまり」という感じ。

 背面の出力ピンジャックも真鍮削り出しで、一般的な物とはまるで違う(左の写真)。前も後ろも、上も下も、安っぽい所が無い。

 正面の操作スイッチの配置は、マランツ独特の共通デザインに合わせた独特な配置で、一般的な配置とは異なるため、最初はちょっと戸惑うけど、ロード/イジェクト、再生/停止などの基本的な操作だけなら問題無し。


 付属のリモコンも「これ、わざと重くしてるだろ」と突っ込みたくなるような重量感。ボタンが多く、使い易いとは言い難いけど、普段必要な基本操作だけなら困る事は無さそう。


 ディスクトレイは「つるつる」滑るタイプ。デノンのが滑らないタイプだったのと対照的で、俺はマランツの方がディスクを置き易いと思った。


 音に関しては、私ごときがどうこう言うレベルではなく、出てくる音にただただ聴き入るのみ。2種類のフィルターが用意されていて、好きな方が選べるようになっているのだが、確かに違いはあるようだが、どっちが良いのかなかなか決められず。結局デフォルトを選択。これはまさに趣味の領域ですな。

 あと、本体に耳を近づけるとディスクの回転音やアクセス音が聞こえる。この音がちょっと大きめな気が・・・。そこが残念な点かな? それ以外は不満無し。


【SACDを探して】
 せっかくSACD対応機を買ったのだから、SACDの音ってヤツを聴いてみたくなって、わざわざSACDのアルバムを探しに行った。

 しかしアレですなあ。ホント、街からレコード屋っつーかCD屋というヤツが消えてしまいましたねぇ〜。仙台だと残ってるのはHMVと新星堂くらい?

 今回は「のだめカンタービレ」で印象が強かった、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番と、先日NHKの「名曲探偵アマデウス」でやって興味深かったショスタコーヴィチの交響曲第5番を探しに行った。

 で買ってきたラフマニノフのSACDを聞いたら、何か曲が違うんだよね。「あれあれぇ〜?」と思ってジャケットをよく見てみたら、協奏曲第2じゃなくて、交響曲第2なの!

 ぎゃぼ〜〜っ!!(>_<; まあ交響曲の方も名曲だからいいんだけどね・・・。

 (左の写真は、交響曲のCDと、後で買った協奏曲のCD)

 ショスタコーヴィチの第5番の方はSACDのが輸入版のしかなくて、ちょっと迷ったけど、せっかくだからSACD版の方を買った。同じ音源だと思われるのに国内盤はなぜか通常のCDなんだよなぁ〜。何で?

 で、買った後によくよくジャケットの表示を見てみると、SACDって

 (1)SACDステレオ
 (2)SACDマルチチャンネル(サラウンド)

 の2種類があって、買ってきたヤツはマルチチャンネルなんだって。これじゃあウチのステレオでは実力を発揮できない、っつーかマルチの分を聞けない分だけ損してる? 何だかガックリ・・・orz

 サラウンドで聴ける環境を整えてる人ってそんなにいないよねえ? っつーかウチのプレーヤーはマルチチャンネル出力に対応してないし。音源が同じでも、CD版とSACD版が別個に発売されてたりする理由はこの辺りにあるのか? よく知らんけど。

 ちなみに、普通のSACDは、SACDとCDの2層構造になっていて、CDとしても聴けるようになっているから、安心と言えば安心。

 まあ、そんなこんな色々あったけど、取り敢えず聴いてみたんです。で、やっぱりそんな驚く程の違いは感じなかったのでした(マルチチャンネルで聴けば違うのかも?)。CDとSACDの違いよりも、録音やマスタリングのクオリティーの違いの方が大きいなあと思ったのでした。

 過去の経験で、同じ曲(同じ音源)でも収録アルバムによって、「何じゃこりゃ〜?」と失望する音が出るCDがあったりするんだよね〜。マスタリングの違いなんだろうけど。その差を考えると、SACDとCDのスペック差はそんなに気にする必要は無いんじゃないかなという結論。


【最後のプレーヤー?】
 以前実験して、ウォークマンからアンプに入力してもかなり良い音が出るのは分かっていた。ウォークマンがCDプレーヤーの代わりになるのだ。

 だから、いっその事ウォークマンを音源とした据え置きコンポを作って欲しいと思った。

 何年か前ソニーからHDDオーディオデッキみたいなのが発売されてたんだけど、こいつは人気が無かったらしく、生産終了になっちゃった。

 HDDじゃなくて、ウォークマンそのものを入力として使うデッキなら汎用性があって、かなり使えるような気がする。まあ、iPodでは既にそういうのが出てるワケだが・・・。

 iPod的な音楽の聴き方に慣れてしまうと、CDを1枚ずつプレーヤーにかけて聴くスタイルは何だかおっくうに感じてしまう。

 街からレコード屋が消えたとか、CDの売り上げがかなり落ちているとかあるけれど、蓄音機以来の1枚ずつメディアをかけて音楽を聴くというスタイルはもう消滅する運命にあるのかも知れない。

 というワケで、今回購入したマランツ SA-15S2 が、俺の「最後のCDプレーヤー」になるのかも。

 とか記事を書いていたら、「英国のリン社が今年いっぱいでCDプレーヤーの生産をやめる」というニュースが! やっぱり時代はそっちの方に流れているのね・・・。

[2009/11/24]


戻る