恐怖の文房具道にハマる
そして道は続く・・・
だからそっちに行っちゃダメだと言ったのに。
【万年筆の沼に足を取られる】 3月から、シャーペン、ボールペンなどの文房具をネタにしてきて、最終的には万年筆にたどり着いた俺。 でも、ちゃんとした万年筆は凄く高価なので、プラチナ万年筆の「プレピー」という、200円の異様に安い、しかしちゃんと万年筆してるというヤツを買ったのだった。 で、職場でのメモ書きとかはこの万年筆で取ってたんだけど、そのスラスラ〜という書き味がけっこうやみつきに(苦笑)。プレピー、200円なのにあなどりがたし! おかげで万年筆にハマるマニアの気持ちが何となく分かった気がしたのだった。 で、ここまで知ってしまうと、もっと奥を見てみたい・・・という欲が生まれてしまい、プレピーでは満足できなくなってきた。(ダメ!そっち行っちゃダメぇ〜〜〜) で、書店に行くと、「趣味の文房具」とか「男の万年筆」とかその手のムックがたくさん売られていて、それらを読んでみたら「価格別おすすめの万年筆ベスト5」みたいな特集をやっていて、5千円以下の部門にはプレピーも含まれていたが、第1位はドイツの老舗ブランド「ペリカン」で出してる「th.INK(シンク)」(2千円)が良いという評価だった。 ほう! と思って、さっそくその「th.INK」を探してみたのだが、実はこの商品、既に廃番になっていて、もうどこにも在庫が無いのだった・・・。くうう、気づくのが遅かったか。なお、同じデザインのボールペンの方は、まだ売られているようだ。 というワケで、1万円程度で買える良さげな万年筆を物色。海外の有名ブランドだと・・・ パーカーの「IMプレミアム」「ソネット・オリジナル」 ウォーターマン「メトロポリタン・エッセンシャル」 ペリカン「M205」「P200」 ラミー「ステュディオ」 辺りがあるようだが、ブログの意見を総合すると、1万円くらいの物だと国産の方が絶対良いよ!との事。なるほど、それはもっともだと思ったので、あらためて国産品を物色。 プラチナ万年筆「#3776センチュリー」 セーラー万年筆「プロフィット・スタンダード」「プロフェッショナル・ギア」 パイロット「カスタム74」「カスタム・ヘリテイジ91」 国産で1万円というとこの辺りになるが、顔料インクを使用するという前提で考えると、やはりスリップシール機構採用のプラチナ万年筆の物に軍配が上がる。 プラチナ万年筆では、富士山の高さ3776mを商品名に使った「#3776」というシリーズが、30年以上前から定番商品になっていて、それが21世紀になってリニューアル。 「#3776 センチュリー」という名前になって、これが人気商品との事。値段は定価1万円だけど、ネット通販の安い店なら7千円台でも買えるようだ。 同じ#3776センチュリーでも、1年に1回くらい特別限定バージョンが出る事があって、そういうのは定価が2万円とか一気に高くなるが、まあ、俺ごとき初心者は普通ので良いだろう。 聞けば、この#3776センチュリーという万年筆、日経ウォッチャーというマーケティング専門誌で2011年に、マツダ「デミオ」とかホンダ「フィットシャトル」とかと一緒に第4位に選ばれてるのね。新技術、品質向上、使い勝手、アピール度などが評価されたとの事。 プラチナ万年筆という会社についても、大正時代創業の老舗で、職人の伝統工芸的手作りの高級品を出しつつも、実は(今では当たり前の)カートリッジ式インクはプラチナが開発したものだったりして、けっこう技術開発も大事にしている会社のようだ。 こういう会社は応援したくなっちゃうんだよなあ〜。体質的に。 というワケで、万年筆にハマった記念として、ちゃんとした物を1本買おうという事で、#3776センチュリーを買ってみっか!と決意。 【万年筆の買い方について】 万年筆マニアのブログを読むと、万年筆を買う際の注意点として、 ・ 必ず試し書きをしてから買う事。 ・ 試し書きさせてもらえないような店で買ってはいけません。 ・ 試し書きさせてもらえる店なら、店員も万年筆の知識がある店なので間違いが起こりにくいし、万一何かあった際にも安心です。 ・・・などと書いてある。 あと、万年筆というのは、ペン先の太さの種類がたくさんあって、一般的には細字(F)、中字(M)、太字(B)の3種類あるのが普通だが、今回買った#3776センチュリーでは極細(EF)、超極細(UEF)、極太(C)、細軟(SF)、楽譜書き用の「ミュージック」などもあるようだ。 種類が多いヤツになると、パイロットの人気商品「カスタム742」という物では、何と15種類もある。(下記) EF 極細字 F 細字 SF 軟細字 FM 中細字 SFM 軟中細字 M 中字 SM 軟中字 B 太字 BB 極太 C 特太字 MS ミュージック(楽譜用) PO ポスティング(ペン先が下に反っている) FA フォルカン(形が特殊な柔軟なペン先) WA ウェーバリー(ペン先が上に反っている) SU スタブ(縦線が太く、横線が細い) 万年筆を買う際には、必ず太さを指定する必要がある。っつーか、太さを気にせずに買う事など、まずありえない。クルマで例えれば、グレードやオプションを指定せずに買うようなものだ。 そして、書ける字が自分の趣味に合ってるかどうか、実際に書いて確かめないといけない。さらに言えば、書き味(ペン先の抵抗感とか、インクの出具合とか)も、実際に書いてみないと分からない。 でも、そういう事が試せる専門店って基本的に定価販売だからねぇ〜。ネットショッピングだと2〜3割引きで買えたりするのを見てると、専門店には行きづらいんだよなあ・・・。 っつーワケで、頑張ってる専門店さんには申し訳ない。邪道とは理解しつつも、「ごめんね、ごめんね、ごーめーんーねー(うっ!)」という、新人だった頃のとんねるずのネタを頭の中で思い浮かべつつ、ネットで注文したのだった。(タカさんの芸風はあの頃から全然変わっていない・・・byニョーボ) 【現物が来た】 で、商品は無事に届いたのだが、万年筆というのは上述のように、実際に書いてみないと分からない部分が大きいので、実は不安でドキドキしていたのであった。 もし不具合があったりしたら悔しいので、さっそくインクカートリッジ(カーボンインク)を挿して、試し書き。あ、買ったのは細字(F)です。 まずサラサラっと書いてみて、その非常に軽い書き味にビックリ。当たり前なんだろうけど、撫でるように字が書ける。 これまで使っていたプレピーも「軽い!」と思っていたが、#3776センチュリーはさらに軽い。あと、プレピーだと書く際に「サッ、ササッ」というペン先が紙の上を走る音が聞こえていたのに、センチュリーだとそういう音がほとんど聞こえない。 正確に言えばセンチュリーでも音はしているのだが、プレピーに比べて明らかに音が小さい。 ペン先と紙の摩擦が少ないようで、筆記具マニアが「カリカリ感」と呼んでいる感覚はプレピーよりも少なくて、むしろ「ヌラヌラ感」と呼ばれている感覚の方が強いようだ。(もちろん書く紙の質にもよる) このためプレピーで書き慣れていると、#3776センチュリーではペンが軽く走りすぎてしまい、最初は思ったように字が書けなかった。ここら辺は慣れなんだろうなあ。 下の写真の左がプレジールで、右が#3776センチュリー。ほぼ同じ形状で、知らない人がこの写真だけ見たら、どっちが安物なのか分からないかもね(苦笑)。 |
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フランスのシャルトル大聖堂のステンドグラスの青をイメージしたという本体。透明度は低いけど、光に照らすと中のペン先やインクカートリッジが透けて見える(下の写真)。 |
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書ける字の太さは、下の写真のように、プレジール(プレピー)03とほぼ同じ、あるいはやや太いくらい。インクはどちらも「カーボンインク」を入れてます。 |
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【顔料インクの件】 一般的な万年筆用のインクは染料インクであり、耐水性や耐光性はあまり期待できない。ちょっと水に濡れただけでインクが流れてしまったり、日光下に置いておくと数週間で色が消えてしまったりする物も多いようだ。 俺的にはそれでは困るので、耐水・耐光性に優れる顔料インク(ただしペンの中で固着しちゃうとペンをダメにしちゃう)を敢えて使っているのだった。 現在購入可能な万年筆用顔料インクは、プラチナ万年筆の「カーボンインク」(黒色)の他に青、赤、茶の3色。セーラー万年筆の「極黒」「青墨」、あと「ストーリア」シリーズの8色くらいしかない。 万年筆のインクカートリッジは、それぞれ自社の製品にしか取り付けられないので、「カーボンインク」のカートリッジはプラチナ万年筆のペンに、「極黒」のカートリッジはセーラー万年筆のペンにしか取り付けられない。 この2社のインクを取り出して調べたマニアのブログによると、「カーボン」と「極黒」はかなり性質が違うようだ。 「カーボン」の方は表面への馴染み性が強く、パレットに出すと表面にはじかれずによく馴染み、しかも一度乾いてしまうと簡単には落ちないという。 インクとしては、それは悪い性質ではないのだろうが、これはペンの中でインクが固着してしまう危険性が高いという事でもある。 一方「極黒」は、インクをパレットに出してもパレット表面にはじかれてしまい、しかも乾燥後でも水ですすぐだけでキレイに流れるという。 万年筆のインクを交換する際には、中をキレイに洗わないといけないのだが、「カーボン」の方は専用の洗浄液を使わないと中にインクが残ってしまってダメだそうだが、「極黒」は水だけでも洗浄可能と言われている。 今回買った#3776センチュリーにはインクコンバーターが付けられるから、「カーボン」を抜いて洗浄後、「極黒」をコンバーターに入れて使って使ってみた。(下の写真) |
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字を書いてみると、まず黒味がけっこう違うという事が分かった。「カーボン」の黒と比較すると、「極黒」の黒は若干薄い感じに見える。また、ノートの罫線によるインクのはじかれは「極黒」の方が多く、インクのにじみや裏抜けは「カーボン」の方が多い。(下の写真) |
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あと、「カーボン」の方がインクの出が多いせいなのか、あるいはインクのにじみのせいなのか、線が太くなる傾向がある。字の"止め"の所でインクがグッと出て紙の上に溜まると、溜まった部分でにじみや裏抜けが生じている。これが「極黒」だと、スッと筆が抜けるような筆跡になりやすく、"止め"の部分でもにじみや裏抜けがほとんど出ない。 書き心地としては、「カーボン」の方が明らかに抵抗が少なく、スラスラ・ヌラヌラした書き心地。「極黒」では紙との摩擦が強くなり、ペン先が走る音も大きくなる。「カリカリ」とまでは言わないが、「サリサリ」くらいの感じ。インクが違うだけでこんなに書き心地が変わるとは思わなかった。 今回購入した#3776センチュリーでは、「カーボン」で書くと字が太くなる点と、抵抗が少なすぎてスラスラしすぎな点が気になっていたので、この「極黒」の細くて少し抵抗があるサリサリした書き心地の方が好ましく感じられた。 ただし、プレピーでは「カーボン」の方が書きやすいと思った。元々のペン先の摩擦がプレピーの方が大きいので、ヌラヌラ感が強い「カーボン」との組み合わせで、ちょうど良い感じに相殺されているのだろう。 【 0.3mm のシャーペン】 シャーペン編で、俺は 0.5mm のシャーペンしか使わないから 0.2mm と 0.3mm しかない「オレンズ」は選考外みたいな事を書いたが、その後な〜んとなく細いシャーペンが気になりだし、ふらふら〜っと1本1000円のロットリング・ラピッドシャープ 0.35 を買ってしまった。(病状悪化か・・・byニョーボ) このラピッドシャープ。ロットリングの公式HPの品揃えの中には入っていないが、なぜか日本版のカタログにはちゃんと載っている。太さ表記は 0.35 となっているが、一般の 0.3mm のシャー芯が使用できる。(下の写真) |
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0.5mm のシャーペン記事でも書いたが、俺はシャーペンの先っぽが格納されるヤツじゃないとダメなのだ。同じロットリングの製図用シャーペンの "500" や "300" にも 0.3mm の物はあるのだが、こいつらは軸(スリーブ部分)が格納されない。 スリーブ部分が格納されないタイプだと、机から落としただけでスリーブが微妙に曲がってしまって、使えなくなってしまうのだ。つか、昔それで失敗した事があったので、だから軸が格納されるタイプが欲しいのだ。 その点、このラピッドシャープは軸が格納されるようになっていて良い!(下の写真)。 |
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この値段で軸が格納できて、ラバーグリップ式で、ノック部分の消しゴムが回転でにょきにょき伸びるというメカまで採用。これはオタク心をくすぐります。 なお、品番シールをよく見ると "MADE IN JAPAN" の表記が(下の写真)。やっぱりロットリングのペンは日本で作っているんだなあ〜。 |
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というワケで、現在のペンケースの中身を紹介すると、 0.5mm シャーペン: ロットリング「ラピッドプロ」 シャー芯: 三菱鉛筆「ハイユニ」 消しゴム: パイロット「フォームイレーザー」を「ケシキーパー」に格納 ボールペン: ロットリング「ラピッドプロ」 に easy FLOW インク 万年筆: プラチナ万年筆「#3776センチュリー」 インク: セーラー万年筆「極黒」 0.3mm シャーペン: ロットリング 「ラピッドシャープ 0.35」 サインペン: ぺんてる「プラマン」 ラインマーカー: サクラクレパス「ピグマ 05」と「マイクロパーム 05」 俺厳選の各方面のツワモノがここに結集! 特に何か書く用事が無くてもこれらを納めたペンケースを持ち歩き、時々ペンケースの中からペンを取り出してはニヤニヤし、またペンケースに納め直す。そんな毎日。 そして俺の前には、長い長い道が続いている。 そう。俺はようやく歩き始めたばかりだからな。この果てしなく遠い、文房具道をよ・・・。 |
未完 |
※ご愛読ありがとうございました。ロード黒沢先生の次回作にご期待ください。(ウソ) |
[2015/6/2] |