盛岡に行ったら
じゃじゃ麺を食え!!


 岩手県盛岡市。日本で一番広い県、岩手県の県庁所在地。名物として、わんこそばが有名だが、観光で盛岡に来たからと言っていきなりわんこそばを食べようとするのはあまりお勧めできない。なぜかと言うと、わんこそばというのは大人数でわいわいがやがや、競いながら食べてこそ楽しい物であって、数人の家族連れ程度ではあまり楽しめない。ましてや恋人同士や新婚旅行などで来て、二人っきりでわんこそばを食べるなど、想像するだけで凍え死にしそうなくらい寒々しい光景なのだ。

 では盛岡では何を食べれば良いのか? 蕎麦を食べたい人は普通の蕎麦を食べれば良い。盛岡辺りは蕎麦が美味しい地域なのだ。蕎麦と言えば更級とか戸隠とか、東北では山形が有名だが、なんのなんの。盛岡だって美味い蕎麦が食べられるのだ。宮城県の人には悪いけれど、死んだ親父は蕎麦が大好きだったのだが、宮城県に引っ越してきてからはどんな蕎麦を食べさせても「美味い」と言わなくなってしまったのだった。で、盛岡や山形に行って食べると「美味い」と言うのだった。そういう事なのだ。

 さて、盛岡で美味い物は蕎麦だけじゃない。盛岡には二大名物麺類がある。それが「冷麺」と「じゃじゃ麺」だ。冷麺の方は、韓国系焼肉屋で食べられるキムチが入った辛い麺で、韓国の郷土料理である冷麺を、盛岡在住の韓国系の人が独自に工夫した物だという。盛岡近辺ではかなりメジャーな食べ物になっている。

 そして「じゃじゃ麺」。
 中華料理の「ジャージャー麺」と間違えられる事が多いが、盛岡の「じゃじゃ麺」と「ジャージャー麺」は全く別物である。「じゃじゃ麺」はうどんのような麺に挽肉の味噌炒めみたいな物を乗せて(下左の写真)、スープ無しでグジグジにかき混ぜて食べる物だ(下右の写真)。これも冷麺同様、盛岡近辺ではかなりポピュラーな食べ物である。
 上品な食べ物とは言えないかもしれないが、値段が安くて美味しい事から学生・若者を中心に人気がある。私が学生だった80年代にはまだそれほど普及しておらず、食べられる店も限られていたが、90年代にはメニューに加える店が増えた。

 冷麺の方も私が子供の頃にはまだそれほどは知られてはおらず、知る人ぞ知る味という感じだった(と思う)。その噛みきれないくらい腰がある麺やキムチで辛いスープなど、むしろゲテ物に近いイメージがあったかもしれない。しかしこれも80年頃からジワジワと人気が出始め、今では「もりおか冷麺」として、盛岡名物のひとつとして認定されている。当時学生仲間の間では「じゃじゃ麺には愛がある。冷麺には哲学がある」と言っていたものだ。現在、盛岡駅の土産物屋でかなりの種類の「じゃじゃ麺」「冷麺」が売られており(下の写真)、選ぶのに困るくらいだ。なおこの冷麺は、冷やし中華と違って夏にだけ食べる物ではないので、季節を問わず食べられる。
 さて、食べる際の注意事項をひとつ。
 冷麺を注文する際は、初心者は辛口を頼まない方が無難である。辛口とか大辛などは本気で辛い。また、麺はまるでゴムのように歯ごたえがある麺なので、最初から覚悟しておく事。最初は「こんなののどこが美味しいのか?」と思うかもしれないが、食べているうちに癖になる・・・と思う。(少なくとも私は好きだ)

 冷麺は人に勧める時に注意が必要だけど、じゃじゃ麺は誰にでも勧められる味だと言える。問題はむしろ食べ方の方にある。食べ方は上に書いたように、グジグジとかき混ぜてから食べる。多くの場合、おろしニンニクや、おろしショウガ、ラー油、そして酢をかけてからかき混ぜる。たくさんかけると辛くなるので、そこはそれぞれの好みで調整する。

 また、食べ終わった後のどんぶりに生卵を落とし、そこに熱いスープを注いで卵スープにするという「チータンタン」(通称「ちーたん」)という物がセットになっている場合があるが、生卵が苦手な人は断ればよい。


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