富士フイルムのデジカメ
ファインピクスF10
子供が選びました。


 奏一郎用のデジカメを買う事にした。そろそろこういう「おもちゃじゃない物」の魅力に目覚めてもよい年頃だろう。俺も小学生の頃に顕微鏡とかラジオとかカセットテープレコーダー(当時はまだ珍しかった)を使わせてもらい、その経験が後の技術者魂(オタク魂)の根っこになった気がする。

 機種選定条件としては

 ・ コンパクトで、かつ子供でも扱い易い事。
 ・ 起動が速く、レリーズのラグも短い事。
 ・ 電池の持ちが良い事。
 ・ 室内でも普通に撮れる高感度が望ましい。
 ・ 広角側重視のレンズが望ましい。

 そして実は次が最も重要なのだが、

 ・ 子供がそれを気に入る事。

 という事。本人が乗り気にならなければ何にもならない。


 取り敢えず

 ・ カシオのZ500
 ・ ニコンのS2
 ・ ソニーのT5
 ・ パナソニックのFX9
 ・ 富士フイルムのF10

 辺りを購入候補として某大型電気店に行ってみた。そして子供と一緒にとっかえひっかえ各機種をいじりまくった。

 当初の目論見としては富士フイルムZ1やコニカミノルタX60のような屈曲光学系を採用した、レンズが飛び出さないタイプを主目標に据えていた。それは、以前使っていたレンズが飛び出るタイプ(沈胴レンズ式)の起動が異様に遅かったという事から、「起動の速さなら屈曲式の方が有利なハズ」という先入観から来たものだった。だが現行各機種を試した結果、現在においては沈胴式でも十分に起動が速く、そして、屈曲式が必ずしも起動が速いとは限らないという事が判明した。(屈曲式でも遅い物は遅い)

 また、「今買うならやっぱり薄型でしょう」という先入観もあった。だが候補上位にあったソニーT5、カシオZ500、パナソニックFX9などの最近の売れ筋デジカメは、どれも薄型で非常にカッコいいのだが、実際にいじっているうちに「薄すぎてちょっと持ちにくい(構えにくい)なぁ・・・」という感触も無視できなくなっていったのだった。つまり、当初候補の上位にあった機種が転落して行き、転落しなかった機種が残る形になった。

 さんざんいじりまわした後で、奏一郎に「どれが一番気に入った?」と尋ねてみた。そうすると奏一郎は迷わず富士フイルムF10を選択。

 む? よりにもよって最も外見がダサいF10を?と思い、試しに「どうしてそれが良いと思った?」と聞いてみた。すると奏一郎は「これが一番持ち易いから」と断言。

 ニヤリ。

 我が子ながら、やるじゃないか。見た目にカッコいい薄型デザインの弱点を見抜いた・・・というワケではないだろうが、良いカメラの本質的な所はしっかり押さえたな。確かにF10は本体が分厚くて、ゴロリとしたデザイン(右の写真)。他社のスマートなデジカメと並べられると、このダサさだけで客が逃げてしまいそうなほどにダサいデザインだ。しかし、構えた時の持ち易さという点では薄型タイプの比ではない。構えた時の指の置き場所というか、ホームポジションみたいなのもハッキリしていて、構えてしっくり来る。

 そしてF10には他には無い特長がある。感度がズバ抜けて高いという事だ。一般的なデジカメには普通の室内でもストロボが必要になったりするほど感度が低い物が多い。もちろんどの機種も感度を調整できるようにはなっているが、高感度にするほどノイジーな画面になってしまう。

 その点このF10では ISO1600 まで対応していて、しかも感度を上げた時のノイズが比較的少ないようだ。これなら夜の室内(蛍光灯だけの普通の照明下)でも使用に耐えられそうだ。

 同じ富士フイルムのZ1も高感度が売りで、しかもこちらは屈曲式。しかし、パワースイッチにもなっているレンズカバーに指が引っかかる所が無いためカバーが開けにくく、つまりパワーオン/オフしにくいため失格。

 というワケで富士フイルムのF10に決定!


【商売上手】
 店員「本体セットにはメモリーカードが付属しておりません。メモリーカードも一緒に購入された方が・・・」

 今、メモリーカードってどのくらいの値段なんだろう? 昔は256MBのコンパクトフラッシュ1個が、カメラ1台買えるくらいの値段だったが・・・。

 店員「えーと256MBの物が7千円強で、512MBの物が1万弱ですね」

 俺「そ、そんなに安くなったのか。ビックリだな。それじゃあ512MBの物を一緒に」

 店員「ありがとうございます」

 ここまでは普通の店員でもアドバイスしてくれるだろうが、ここから更にひと押しふた押しするのが、某大型店店員のさすがな所。

 店員「カメラケースも別売りなんですが、ご一緒にいかがでしょう」

 うむ・・・。確かにカメラケースは重要だ。ベルトに付けて気軽に持ち歩けるようにしてこそのコンパクトカメラと言えよう。(右の写真)

 俺「はい、それも一緒に」

 店員「ありがとうございます」

 店員「実は、ケースに入れていても液晶画面が傷つき易いんですよ。修理依頼で来る物の多くが液晶画面の傷なんです。そこで液晶保護シートもご一緒にいかがでしょう」

 そ、そうか。液晶画面って今でもそんなに傷つきやすいのか。

 俺「なるほど・・・、じゃあそれも一緒に」

 店員「ありがとうございます」

 というワケで、店員に勧められるままに一式購入。

 でも最後の液晶保護シートはその日のうちに剥がれてしまっておシャカ。くうう!シートは買わなきゃよかった、と悔やんでももう後の祭り(T^T)


【ファーストインプレッション】
 まずはサッと使ってみた感想を一席。

 ・ グリップ感があって構えやすい。

 ・ 起動時間やシャッターレリーズは十分に速い。

 ・ 合焦時間はちょっと遅めかな? ちょっともたつく事も。やはり暗い所では時間がかかる事があるようだ。その割にAF補助光はメチャ強烈。「うわっ、まぶしい!!」「め、目がやられる!!」というくらいにまぶしい。

 ・ PCへの接続や充電がちょっと変わっていて、専用のアダプターを経由する必要がある。直接USBでPCに繋いだり、直接充電できないのはちょっと不便だと思った。が、これは慣れの問題かもしれない。少なくとも我が家での使用に関しては問題無し。

 ・ カメラ任せの「オートモード」があるので、子供でも普通に撮れる。

 ・ 確かに感度は高い。夜の室内(蛍光灯だけの照明)でも普通に撮影できる。偉い。

 ・ 電池の持ちは、一般的なデジカメに比べて良い部類に入る。

 ・ 分厚い本体だけど、専用ケースに入れて持ち歩く分には特にかさばる感じはしない。


【感度と画質】
 一番の売りである感度について、ISO100から1600まで撮り比べてみた。


 上がISO100で撮った物で、下がISO1600で撮った物。どちらもそのまま縮小(約21%)している。パッと見た感じそんなに変わらない。でも、よ〜く見比べるとディテールや影の部分のノイズに若干の違いが見える。


 もっとよく比較するため100%で切り出してみた。

 これがISO100で撮影した物。

 ニョーボが付けた傷もハッキリと・・・。

 そしてこれがISO200の物。まあ100とそんなに変わらない。

 これがISO400の物。ちょっと荒くなったのかな?という程度。

 これがISO800の物。荒さが分かるレベルになった。

 で、これがISO1600の物。ハッキリ荒くなっている。

 確かに感度が高いほど荒くなっている。しかし昔のデジカメみたいに露骨にノイズが乗るわけではない。縮小して使う分には1600でも使用に耐える感じ。

 というワケで夜の室内(通常の蛍光灯照明のみ)で、ストロボ無しの片手持ちで撮っても、左のように普通の写真が撮れる。これはけっこう凄い事なのではないだろうか?


 そうそう、買った後で気が付いたんだけど、このF10ってヨーロッパの写真誌団体EISAが選ぶコンパクトカメラ部門で「ベストプロダクト賞」を受賞してるんだってね。やっぱり見てる人は見ているという事かな。

 黒沢家では、死んだ親父も、兄貴も俺も、みんな写真好きだった。奏一郎は喜び勇んでカメラを持って外に出ていった。さあ、どんな物を撮ってくるか楽しみだ。

[2005/09/17]


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