ガスコンロっ!
ビルドっ イィーーーーンっ!!
今どきのビルドインガスコンロ状況


【ガスコンロ選び】
 7月某日、ガス会社主催のガス器具販売イベントの通知が来た。

 「いよいよ来たか」(口元がニヤリ)

 我が家では、以前からビルドインガスコンロ(左の写真)を買い換えようという話になっていたのだが、どうせ買うなら年に1回だかやっているガス会社のイベントの時にしようよ、という事になっていたのだ。(このイベントで購入すると、かなり安く買えるとの事)

 だからこの日のために、だいたいの調べは済ませてあった。まずメーカーだが、大手は、リンナイ、ノーリツ、ハーマン、パロマの4社。ただしリンナイとハーマンは、ガスコンロのラインナップが全く同一である事から、どちらかのOEMだと思われる(たぶんガスコンロはハーマン製)。この記事では名称をハーマンに統一して書く事にする。


リンナイの主力商品の特長
 高効率の内炎バーナー(右の写真。炎が内側に向かって吹き出すように配置してある)
 ・ 熱分布の向上で効率アップ
 ・ 従来では難しかった極小トロ火を実現

 トッププレートに独ショット社製の「セランガラス」を採用
 ・ 美しいディテール
 ・ 熱や衝撃に強い

 全てのコンロ・グリルに1分刻みの調理タイマー直火焼き水無しグリル(焼き加減自動制御)センサー搭載バーナーでは温度を自動調節

 内炎バーナーは見た目に非常にかっこいいが、しかしそれが弱点にもなっている。つまり、内炎タイプは炎が中心に向かって吹き出している関係上、中心に配置される温度センサーの性能が上手く取れないため、焦げ付き防止機能等とは両立できないらしいのだ。(焦げ付き防止の注意書きに「内炎を除くセンサー搭載バーナー」と書いてある)

 更に言えば、内炎タイプにもセンサーを付けたタイプが存在するが、このタイプだと、形状的に煮こぼれを受ける皿の手入れが難しくなってしまうという弱点がある。


ハーマンの主力商品「アドバンス・セイフル」
 全口にセンサーを搭載し、過熱、焦げ付きを防ぐ
 ・ 全口、温度センサーによる自動火力調節機能を搭載
 ・ 直火焼き水無しグリル(焼き加減自動制御)

 シールドトップ構造
 ・煮こぼれがコンロ内部に入りにくい構造
 ・汁受けが無く、手入れが楽

 トッププレートに仏ユーロケラ社のセラミックガラスを採用。

 全口にセンサーがあり、焦げ付き防止機能が備わっている等、安全対策が一歩先んじている。汁受けが無い構造で、手入れが楽なのも大きな魅力。ただし仏ユーロケラ社のセラミックガラスを採用しているのは、最高級グレードの「アドバンス・セイフル」だけで、この機種は100Vの電源に繋ぐ必要がある。


ハーマンのもうひとつの主力「スタイリッシュブリンク+do」
 ダッチオーブンが使える大型グリル搭載。
 全口温度センサー搭載による自動制御。
 全面ゴトク構造による安定感と鍋ずらし可能。

 ダッチオーブンを使いたいならもうこれしかない。「本格指向」がコンセプトで、敢えてガラストップではなく、全面ゴトク構造採用という設計思想も良し。

 パロマについては、えーと、あんまり特徴が無い感じ。スペック的には上述の2社とそれほど変わらないのだが、どこか「昔ながらの」という感じがする。最先端の物を選びたい今回の選定では、特にパロマを選ぶ理由が見つからず、リンナイとハーマンの一騎打ちという形になった。


 今のガンコンロ業界の主流は、

 ・ 綺麗でオシャレなガラストップ。
   (これはオール電化のIHクッキングヒーターに対抗するためだそうだ)

 ・ 温度センサーで過熱・焦げ付き防止、そして自動火力調整。

 ・ 水無しグリル。

 という3点を基本としていて、両者ともこの3点はしっかり押さえている。

 リンナイは、そのオリジナリティーである内炎バーナーの機能美を採るか、煮こぼれのバーナー内への侵入を嫌うか、というジレンマがある。

 その点ハーマンは、煮こぼれがバーナー内に入る余地を無くし、全口に焦げ付き防止機能を施すなど、安全機能をフルスペック化している点が強い。

 また、「スタイリッシュブリンク+do」では、調理の幅を広げるダッチオーブン装備や、全面ゴトク構造にしている点が大きな魅力だ。

 こうなるともうリンナイのジレンマ問題はどうでもよくなってしまい、ハーマンの「アドバンス・セイフル」にするか、あるいは「スタイリッシュブリンク+do」にするかという2択に集約されてしうのだった。

 「スタイリッシュブリンク+do」は、ガラストップではなくステンレストップだが、全面ゴトク構造にするならそれも納得できる。また、「アドバンス・セイフル」の多機能さとは逆に、そのシンプルさに魅力を感じるのもまた事実。


 俺「ダッチオーブンって知ってる?」

 ニョーボ「知ってるよ」

 俺「ダッチオーブンが付いてるガスコンロがあるんだけど」

 ニョーボ「ダッチオーブンで何を作ってくれるの?」

 俺「いや、そうではなくて。ダッチオーブンを使ってみたい?」

 ニョーボ「ぜーんぜん」

 俺「・・・・・・」

 取り付く島もないとはこの事だ・・・。というワケで「スタイリッシュブリンク+do」、はい消えたー! そして自動的に「アドバンス・セイフル」購入決定!


【イベント会場】
 さて、イベント当日。我々は真っ先にハーマンのブースへ向かった。するとそこには「スタイリッシュブリンク+do」がドーンと構えていて、しかも得意のダッチオーブンで調理実演中であった。(下の写真)

 ハーマンは「アドバンス・セイフル」よりも「スタイリッシュブリンク+do」に力を入れているようだ。

 俺「おお、これがダッチオーブンが付いてるヤツだよ!」

 ハーマン営業「はい!よくご存じで!! この機種はですね(以下商品説明)」

 俺は、ダッチオーブンの現物を見せれば、ニョーボも気が変わってダッチオーブンを使いたくなり、これを選ぶかも知れない、と思って「+do」の商品説明を積極的に聞いた。

 ニョーボも、ただ聞くだけでなく、所々で質問をしていたので、「お? ダッチオーブンに興味がわいてきたのか?」と思った。

 が、ブースを離れた後に聴いてみたら、

 俺「どう? ダッチオーブンを使ってみたくなった?」

 ニョーボ「あたし、あれを買ってもダッチオーブンは使わないと思うの

 俺「あら・・・(^_^;」

 ハーマンの営業さんの努力は空振りに終わってしまったようだ。


【リンナイブース】
 次はリンナイのブースに行ってみた。するとそこには、リンナイ自慢の「内炎式バーナー」搭載機の姿は無く、全口に温度センサーを搭載した外炎式バーナーの機種が置いてあった。(下の写真)

 俺「あれ? こんなのリンナイのホームページには載ってなかったぞ?

 ニョーボ「えと、内炎式が特長だって聞いてたんですけど?」

 リンナイ営業「ええ。以前は内炎式のも作っておりました。しかし内炎式は構造的に温度センサーとちょっと合わない所がありまして、そこに来年(2008年4月?)から法令で全口に温度センサーを付けなければならなくなるという事がありまして、それで・・・」

 俺「ガーン! すいません、博士。そんな法令があった事も知らずに・・・」(はいはいbyニョーボ)

 このリンナイの新商品を見ると、トッププレートは例の独ショット社製「セランガラス」を多くの品種で採用(左の写真)。

 営業さんも「このガラスは凄く強いですから、お手入れが楽です!」と強調。(ハーマンでは、仏ユーロケラ社のセラミックガラスを採用しているが、これを使っているのは最高グレードの機種だけ)

 さらに、ハーマンの特長であった、煮こぼれがバーナー内に入る余地を無くすという点についても、ハーマン以上にこだわって作っているという事が判明。

 実際に手で触ってみて判ったが、バーナーの裾の部分(バーナーリングというらしい)に何かコーティングしてあるのがわかった。またその内部には、バーナーリングの温度が上がらないように冷却フィンが付いていて、焦げ付きの発生を抑えているのだという。

 ううむ。リンナイがこんな隠し球を持っていたとは・・・。これは状況が変わってきたぞ。ハーマンのを選ぼうとしていた理由が完全に消えてしまったではないか。


【決め手】
 リンナイがあんな商品を出してくるなんて全く想定外だ。こうなるとどちらを選ぶか、ふりだしに戻ってしまった格好だ。

 ハーマンの「+do」は、ダッチオーブンを使わないというのであれば、積極的に選ぶ理由が無い。また同社の「アドバンス・セイフル」は、リンナイの新機種と完全に競合するが、この機種は100Vの電源が必要だという点でリンナイの機種と異なる。

 リンナイの物でも、最上位機は100Vを必要とする。しかしトッププレートに特殊ガラスを採用しているのが最上位機だけというハーマンと、乾電池式の下位機種でも特殊ガラスを使っているリンナイを比べてしまうと、やっぱりリンナイの方に食指が動く。(これはあくまでもこの時点での比較であって、きっとハーマンも対抗機種を出してくるであろうから、この記事を読んで購入を考える人はそこの所を注意されたし)

 で、ここでグリルの大きさに目が行った。

 「あれ? リンナイの方が、ハーマンのよりもグリルの幅が広いのでは?」

 スペック的にはほとんど同格のリンナイとハーマン。しかし実物を見比べてみると、グリルの大きさ(特に横幅)ではリンナイの方が大きいように見える。使う側からすれば大きいに越した事は無い。

 両社のブースを往復し、A4版のカタログを基準にしてグリルの大きさを比べてみた所、やはりリンナイの方が指2本分ほど幅が広い事を確認。

 リンナイ営業「はい。ウチのグリルは10インチのピザも焼ける広さです!

 俺「う〜む・・・」

 リンナイ営業「(小さな声で)今決めてもらえるなら更に1万円引き

 俺「と、なると、リンナイでしょうか?

 ニョーボ「だね・・・


 ハーマンさん、残んん〜〜〜念っ!!!(クイズ・ミリオネア調で)

 つい30分前までは完全にハーマン派だったのに、リンナイ必殺の隠し球でまさかまさかの大逆転。展示会場はまさに営業マンがしのぎを削る天下一武闘会だぁああ〜っ!!

 リンナイの営業さんに先導され、ブースから注文書類を書く席に移動する際、ハーマンの営業さんが悲しそうにこちらを見つめているのがわかった。

 「負け戦(いくさ)は営業の常(つね)!」
 「正々堂々の勝負で負けたのだ。君の営業力が弱かったからではない!」

 と、心の中で彼にエールを送る俺であった。


(追記)
 家に帰り、改めてリンナイのホームページを調べたら、ほんの2〜3日前まで内炎式の商品が最前面に押し出されていたのに、それがいつの間にか奥の階層のページに移されていた。もしかしたら今回のイベントが新製品の「お披露目」だったのかも知れない。実際、購入した機種は、最新カタログに「8月発売予定」と書いてあったし。


【それにしても】
 ガスコンロの全口に、立ち消え安全装置と調理油過熱防止装置の搭載を義務付ける法令なんて、全然知らなかったなぁ〜。これが義務化されるおかげでガスコンロの値段が上がり、ただでさえオール電化にシェアを奪われているガスコンロが、ますます不利になるんじゃないの?

 ウチはそんな法令が無くても全口安全装置付きのを選ぶつもりだったから良いけど、そうでない人にはけっこうな負担になるのでは・・・?


【オール電化は本当に良い事なのか?】
 我が家は率先して太陽光発電を導入するほど環境問題やエネルギー問題に関心が高いが、しかしオール電化のメリットについては懐疑的で、敢えて導入を断ったクチだ。

 インターネットで調べてみると、電力会社はオール電化のメリットを盛んに強調しているが、それに対してガス会社は、「本当にそうだろうか?」という疑問を投げかけている。

 オール電化の宣伝ページの中には、オール電化に対して否定的な意見を言う人を、まるで人をだまそうとしている悪人みたいなイメージで描いている所まである。

 一方ガス会社では「実録・わたしのガスなし生活」という小冊子(右の写真)を配っている。この冊子では、オール電化にした一家の生活が淡々とつづられていて、正面切って否定的な事は言わないものの、「オール電化は良い点もあるけど、やっぱり何だかちょっと・・・」と、不安・不満な点をじんわり語っている。

 このように、オール電化を推進したい電気会社と、オール電化にシェアを食われているガス会社の対決という構図がはっきり見て取れる。

 俺としては、電力会社陣営の「オール電化にすれば全てが上手く行く」みたいなイメージには、どうしてもウソ臭さを感じてしまう。全体としてどちらが環境負荷が少ないのか、厳密に検証するのはかなり難しそうだけど、誰か中立の立場で研究してくれないかなぁ・・・。


【火災報知器】
 あと、負担と言えば、今度一般家庭でも火災報知器の設置が義務付けられるんだね。

 我が家の場合は4カ所、あるいは5カ所に設置しなければならず、このイベント会場で担当の人に試算してもらった所、報知器をガス会社からのリースで使用した場合、リース料が月1千数百円かかるという。

 月1千円としても年間では1万2千円・・・。

 報知器を自分で買う場合だと、ホームセンターなどで1個5千円とかで売られているが、これらは有効期限が決まっていて、5年とか10年で交換しなければならないんだよなぁ〜。(短い物では1年という物もあるようだ)

 それを思うと、ガス会社で用意しているリース品は、熱、煙、一酸化炭素の3種類の検知に対応していて、一カ所でも検知したら他の検知器も連動して警報を出すというシステムの優れ物。(普通の物は1階の台所で警報が鳴っても、2階の寝室のは鳴らないから、警報が聞こえなくて手遅れなんて事になる心配がある。その点この連動機能は優れている)

 万一の事を考えると、これのリースの方が良いのかな?と思うが、かかる固定費(リース料)がけっこう高いので、二の足を踏んでしまう。(設置個数が多いほどリースの方がお得になるが・・・)

 いずれにしても、何だか面倒くさい世の中になってきましたねぇ・・・。

[2007/7/28]


戻る