こんな本、買ってきました
(2001年1月〜6月)



「カメラマン、デザイナー、DTP、印刷技術者のためのフォトショップ6.0カラー管理・レタッチ・出力講座」ビー・エヌ・エヌ
 画像レタッチの業界標準的ソフト「フォトショップ」の使いこなし方について解説した本。著者はプロの写真家でデジタル写真の第一人者でもある早川廣行氏。フォトショップの解説本はたくさん出ているが、デジカメ画像に的を絞って解説している物はそんなに多くない。また、画像関係印刷関係の専門用語は意味が解らない言葉が多く、初心者には取っつきにくい。その中でこの本は比較的解りやすい部類だと思う。デジカメで撮った画像を自分でレタッチして、さらに自分でプリントアウトしようという人には最適に一冊だと思う。

 この本によると、ハイエンドのデジカメでもそのダイナミックレンジは銀塩カメラの1/10程度だそうだ。適正露出になる明るさ範囲の広さ(ラチチュード)も狭く、銀塩の中でもラチチュードが狭いカラーポジフィルムの半分以下だそうだ。カラーポジフィルムはキメが非常に細かくて色が鮮やかに出るのでけっこう使ってたんだけど、露出を正確に取らないときれいに撮れないので使いこなしが難しいんだよね。昼間の撮影でもストロボは必須という感じだった。そのポジフィルムよりも更にラチチュードが狭いという事は、デジカメって実はかなり使いにくいカメラなのでは・・・?

 デジカメがスポット測光ではなくて中央重点平均測光が主流なのはこれが原因なのかも。つまり、スポット測光だと対象以外の部分が黒く沈んだり白く飛んだりしやすいので仕方なく平均測光にした、という事なのでは? 銀塩カメラだとラチチュードもダイナミックレンジも広いからスポット測光でも大丈夫だった、という事なのでは? でもこの本では、だからと言ってデジカメは銀塩にかなわないという訳ではないと言っている。デジカメでも適切に撮影すれば銀塩と同じかそれ以上の結果が得られると言っている。

 プリンタでの出力についても詳しく解説してるぞ。インクジェットプリンタの解像度は1440dpiあるのが普通になってきているが、これは疑似階調を出すためにそうなっているだけで、実際に1440dpiで出力できるわけではないという。実際に出力できる解像度はその1/4程度であるという。
 また、画像を出力させる際の解像度は単に高いほど良いというわけではなく、プリンタの解像度能力を整数で割った値にするのが良いという。例えばプリンタの解像度が1440dpiだった場合、実質の解像度がその1/4で360dpi。3百万画素デジカメの画像をA4版に出力すると180〜200dpiくらいになるのだが、180dpiで出力するのが一番良い結果が得られるという結論。でも、実際に試してみたけど195dpiも180dpiもほとんど違いは無かったッス(^^;



「ガンダム占い」ワニブックス
 動物占いとか係り占いとか、○○占いの類。機動戦士ガンダムに登場したMS(モビルスーツ)で人間を分類する占い。いつか出るんじゃないかとは思っていたが、本当に出るとは思わなかった。外見的には面白そうな本に見えるけど、動物占いの動物を単にMSに置き換えただけという感が否めない。血液型と星占いを組み合わせただけ。ちょっと損した気分。

 「こんな本、買ってきました(2000年1月〜6月)」で紹介している「20世紀アニメ大全」の中にも「モビルスーツ占い」というコーナーがあった。これは4つの質問に対する答えで占いの結果が出る物で、これの方が面白かったぞ。元々アニメファンでないと解らないネタを使っているのだから、占いの方法もアニメファンならではの方法にすべきだったね。

 なお、この「ガンダム占い」では私はジム(陸戦型)、ニョーボはケンプファー、奏一郎と詠二郎はジムコマンドでした。なんかパッとしないヤツばかりだなぁ(^^;
 登場するMSはMSV(モビルスーツ・バリエーション)から選ばれた機種が目立つ感じで、私としてはそこが不満。グフ・飛行試験型とか、ジム・スナイパーカスタムとかを出すくらいなら、ZガンダムとかガンダムZZに登場したMSを出した方が良かったのでは?



「幽玄漫玉日記(4)」エンターブレイン
 独自の日記マンガ路線を確立し、その筋(?)ではもはや巨匠とも言える桜玉吉のマンガ。
 連載している雑誌の編集長、編集デスク、そして作者自身が主な登場人物で、実際に起こった事や起こした事をマンガにしている。前回の第3巻では玉吉の精神状態がかなりヤバい感じに見受けられ、「(このままマンガが終わっちゃって)第4巻は出ないんじゃないかなぁ・・・」などと思ったものだったけど、しっかり出てます第4巻(^^;

 最初読んだ時には気がつかなかったけど読み返してみたら、玉吉のアシスタントをやっている「みげー君」が実はあの肉桂ミゲル(週刊アスキーで変な4コママンガ「2001くん」を描いている人)である事に気がついた(もっと早く気がつけよ>俺)。 そうかぁ! そうだったのかぁ〜。なるほどねえ〜。納得。

 玉吉と言えば「桜玉吉・開運画集しあわせ」という画集が出ている。この本は絵のページが切り離せるようになっていて、この絵は玄関、この絵はトイレ、この絵は床の間などと、風水・家相的に飾るべき場所が指定されている。玉吉の絵が好きな人には悪くない。けど中身の割には値段が高いのでファン以外にはちょっと・・・。「こういった本を年度末に無理に出さなくてもいいようになりますように!」と苦笑的本音を自分で書いている所が玉吉らしい。



「画太郎先生ありがとう、いつもおもしろい漫画を描いてくれて・・・」集英社
 あの! あの、漫☆画太郎のマンガ。何だか久しぶりだなあ。
 タイトルを見ると「えっ!? 画太郎って死んだのか?」と思われるけど、本当に死んだんだったらこんなタイトルにはしないっつーの。自分でこんなタイトルにしちゃう所がいかにも漫☆画太郎だよなあ。
 で、中身はいつもの通り。新作ではなくて、これまでコミックに収録されなかった作品をまとめた物という感じ。

 ニョーボは「汚い絵」「気持ち悪い絵」と言って敬遠しているけど、この芸風は癖になる。同じネタの繰り返し。同じコマのコピー使いまわし。あからさまなパロディ。まるで子供が描いたマンガのようなギャグ。よだれ。鼻水。うんこ。ゲロ。血走る目。浮き出る血管。極端なバイオレンス。ババアとジジイ。・・・。

 読む時にはついつい「このコマはどのコマの使いまわしかなあ・・・」などと考えながら読んでしまう。コピーしたっぽいコマがあるのに、その元になっているコマが見つけられなかったりすると凄く不安になり、いよいよ意地になって読み返したりする。・・・はっ! まさかそこまで計算して描かれているのかっ!!(んなワケねーだろ!) でも一見使いまわしに見えないようなコマでも、よくよく見ると使いまわしだったりするので油断ならないぞ。
 ピエール瀧の「画太郎の前に道はナシ! 画太郎の後にも道はナシ!」という言葉には思わず納得。



「大嘘新聞」新潮社
 本当のような、あるいは最初から嘘だとわかるような、嘘の話を発表し続けている人気ホームページがある。「嘘屋本舗2000」「嘘競演WEB」「Quick嘘屋」などだ。それらの作者たちの嘘ネタを一挙にまとめて本にしてしまった物。
 有名なネタとしては、人間の感じる痛さの国際単位として鼻毛を抜く時の痛さを基準にした「ハナゲ」という単位が採用されたという話。本のはちまきに「22万部突破!(目標)」とか「各紙誌大絶賛(予定)」などと書いてあるのも笑える。



「からまん」扶桑社
 唐沢なをき一流のナンセンスマンガ。週刊アスキー連載の「電脳なをさん」と同じ系統のマンガだ。この人は日本一の野放し漫画家とか言われてるけど、このマンガを読むとつくづく実感できるなあ。
 炊きたてご飯の上に岩ノリで描いた「米マン」とか、作者の奥さんの母親が描いた「しゅうとめちゃん」、作者の実母が描いた「ははおやちゃん」などなど、やりたい放題っつーか何つーか。マンガの中で「これで原稿料が出るのか?」などと書いているくらいだからな。作者の意図は?(^^;



「ブンカザツロン」エンターブレイン
 唐沢俊一氏と鶴岡法斎氏のオタクにまつわる討論をまとめた本。オタク第一世代を自負する唐沢氏と、オタク第二世代で唐沢氏の弟子を自負する鶴岡氏。いやあ俺自身オタク第一世代だと思っていたけれど、これを読むと私なんか、まあ第二とは言わないまでも、第一世代の尻尾の尻尾という事が痛いほどわかりますねえ。オタクとしてのスケールが違うっつーか、格の違いを見せ付けられます。
 いやホントに勉強になる本ですわ。オタク系の人は是非これを読んで、「俺も一流のオタクになるぞ!」と決意を新たにするか、あるいは「俺にはあまりにも高い目標だ・・・」と挫折して平凡な普通人として更正しましょう(^^;



「知られざる特殊特許の世界」太田出版
 実際に出願された変てこな特許を集めて紹介、解説した本。

 あの小室哲哉が出願した腕時計型シンセサイザー。あの大仁田厚が出願した特殊レスリング用のリング。(リングの回りに有刺鉄線が配置されているヤツ)
 あの松下電器から出願されていた「漫才人形」。大手ゼネコンのフジタから出願されていた「放尿強さ測定装置付き便器」。
 地球の周りに超巨大な水の輪を作って環境問題を解決しようという、原理はいざ知らず、実際に実行するのは不可能な「発明」を出願してる人。
 アメリカで実際に特許として成立した「ゴルフパターの打ち方」特許。
 永久機関を発明したとして、特許を出願してる人。「あらゆる物を丈夫にし、すべての病気類を癒す神薬」の特許を出願してる人。この宇宙の全ての物事、他人の考えている考えすらも全部自分の発明だ!という究極の特許を出している人。・・・などなど、世の中の奥深さを実感させてくれるぞ(^^; この本、単なるトンデモ紹介にとどまらず、本当に特許の勉強になる真面目な記事も多い(というか、基本的に真面目な本なのだ)。ある意味、会社の特許研修よりも勉強になるかも。



「爆笑問題・時事少年」集英社
 爆笑問題が週刊プレイボーイに連載していた物をまとめた本。俺は以前から爆笑問題の太田光が歳を取ると立川談志みたいになるだろうと思っていた。そしたらこの本には立川談志との対談が載っていて、談志師匠が太田光の事を「俺の息子だよ。文句あっか!」とか、「太田は俺を超えた」とか、これ以上は無いというくらいに認めてるんだよ。あの歯に衣着せぬ談志がだよ!! もう驚いたね。

 これまでなかなか良い弟子に恵まれなかった(失礼!)談志師匠の前に、自分に似た芸風の、しかも自分を超えるかもしれない芸人が現れたので、嬉しいんだろうね。例えて言えば、「飛雄馬め。とうとうこの父を超えおったか・・・。父として嬉しいぞ・・・」という星一徹の心境か。太田光が恐縮してる姿が目に浮かぶようだ。



「オトナでよかった!」エンターブレイン
 唐沢なをき・よしこ夫妻が週刊アスキーに連載していたオタッキーなコラムをまとめた本。書き下ろしのマンガや、夫妻の顔もしっかり判るカラー写真ページあり。子供の頃は好き嫌いをすると親や先生に怒られたし、欲しいおもちゃもなかなか買ってもらえなかった。しかし今、オトナになった我々は誰にも気兼ねすること無く好き嫌いし、好きなだけおもちゃを買うことができるっ!わっはっはっはっ!・・・というのがタイトルの意味。

 書き下ろしカラーページを見ると、よしこサンはウルトラマン・タロウにご執心との事。まるで葬式の時の祭壇のようにタロウグッズが飾られている様子の写真が載っている。主人公役の篠田三郎の写真がまるで遺影のように中央に・・・(^^;

 それにしてもなぜタロウ?と思った人も多いのでは? そう。タロウはウルトラシリーズの中でもかなり子供向けっぽくて、当時の子供にはあまり受けが良くなかった(と思う)。少なくとも当時リアルタイムで見ていた私や同級生の友人たちには、「どんどん子供向けっぽくなって行く」「変てこな設定がバカバカしい」という印象が強く、ここら辺りで見切りを付けた者も多かったのでは?
 しかしこのタロウ。オトナになってから見ると、意外に楽しいのである。リアルでシビアなドラマばかり見た後でタロウのあの、のほほん・あっけらかんとした世界を見ると、けっこう安心しちゃうんだよね。オトナのための童話とか絵本ってのがあるでしょう。あんな感じで見れる。ギャグも入ってるしね。今こそ、タロウのような番組が求められているのかも・・・。



「秘密戦隊ゴレンジャー大全」双葉社
 実際に見た人は知っていると思うが、ゴレンジャーのシリーズ後半はほとんどギャグ番組だ。そのギャグの中心は毎回登場する変てこな怪人。野球仮面、電話仮面、テレビ仮面、機関車仮面、などなど・・・。見た目もかなり変だけど、その言動や性格もかなり変。ギャグみたいな怪人だけれど悪の作戦自体はけっこう真面目。この「本人は真面目にやってるつもりなんだけど、端から見ると完全にギャグ」というのは笑いの基本だよね。ある意味、最初からギャグとして作った「仮面ノリダー」なんかよりも笑える。

 さてこの本は普通のヒーロー本と違って、この本での主役は怪人たちだ。怪人たちのギャグの到達点はその散り際。例えばテレビ仮面はゴレンジャーにチャンネルを変えられて爆死! 電話仮面は秘密の設計図をFAXしようとして、その設計図が爆弾の設計図だったので爆死! 機関車仮面は燃料の石炭が煙突に詰まって爆死! 野球仮面は変化球が打てずに爆死!・・・などなど、毎回笑わせてもらいました。
 そういう怪人たちをメインに置いて、1怪人に2ページずつ使って(笑いどころまで)詳しく解説している。こんな本が欲しかった(^^;

 そして驚いた事は、あの変な怪人(○○仮面)たちのデザインは、石森章太郎本人が意外なほど多く担当していたという事。本人が描いたラフ絵がたくさん紹介されており、使用されなかったデザイン(これもかなり変なデザイン!)まで紹介されている。ゴレンジャーで笑い転げた経験が忘れられない人は必ず購入せよ!



「スヌーピーの50年」朝日新聞社
 原題は「ピーナッツのゴールデンアニバーサリー」。新聞連載50年、掲載紙の数は2千以上という偉業を達成し、世界中の人に親しまれているスヌーピーやチャーリーブラウン。マンガのタイトル「ピーナッツ」の名前を知らない人や、元のマンガを読んだ事が無い人でも、スヌーピーを知らない人はいない。そんな「ピーナッツ」50周年を記念した、作者のシュルツ氏自選集的な本だ。

 スヌーピーはシュルツ氏が子供の頃飼っていた犬がモデルだとか、登場人物は長い年月をかけて少しずつ増えていったとか、スヌーピーの友達の小さな鳥(ウッドストック)は、たくさん登場する同種の鳥たちの中の一匹だったとか、シュルツ氏は第2次世界大戦を一兵士として戦った経験者なので、戦争に関する生々しいネタがけっこう多いとか(ノルマンディ上陸作戦の日には「この日を忘れるな!」という戦場の絵を描いている)・・・などなど、これまで知らなかったピーナッツの一面に驚かされる。

 それにしてもこのマンガ、あらためて読むと不思議なマンガだよ。オチらしいオチが無かったり、オチがあっても笑うようなオチではなかったり。登場人物それぞれの人生哲学みたいなのがはっきりしていて、それを語らせるのが目的みたいな所があるな。



「世界神話事典」角川書店
 単に各地の神話を羅列したのではなくて、それぞれの共通性や特徴を述べる論文形式になっている。それだけに、読んで楽しむというよりは、研究するための本という感じ。各地の神話の中にはかなり面白い物がある。例えば「世界の始まり」の項で、

【シベリアのチュクチ族】
 ワタリガラスの妻が夫に「大地を造りなさいよ」と言った。夫は「できない」と答えた。妻は「じゃあ、私は人間を造るわ」と言って横になり、人間を産んだ。夫は「お前は人間を造った。俺は土地を造る」と言って飛び上がって糞をした。糞は水に落ちてたちまち大きくなり大地になった。

 【南アメリカのグァラユ族】
 ムビルというウジ虫が意思により人間になり、意思により大地を創造した。

 う〜ん、カラスから生まれた人間やウジ虫から変身した人間か・・・。素朴ではあるけれど、あんまりかっこよくないなあ(^^;

 ギリシア神話や北欧神話などの詳しい内容を楽しみたい人には・・・
「ヴィジュアル版・世界の神話百科(ギリシア・ローマ/ケルト/北欧)」原書房
 の方がお勧めだ。こちらはほとんど全てのページにカラー図版が入っており、これらを見るだけでも楽しめる。また登場人物や地名などで一項目になるような構成(百科事典形式)になっており、知りたい事を探しやすく読み易い。

 ところで、アーサー王伝説の項を調べてみると、「世界神話事典」では、アーサー王が亡くなる時に魔法の剣エクスカリバーを海に投げ込んだと書いてある。が、「世界の神話百科」でも映画「エクスカリバー」でも、エクスカリバーは湖に投げ込む事になっている。たしか、エクスカリバーは湖の精から授かったから湖に返したのではないの? 海に投げ込むというのは納得がいかないなあ。



「世界の歴史に学ぶ」光人社
 タイトルだけ見ると歴史の本のように見えるが、読んでみるとむしろこれは戦術史研究書だ。著者は自衛隊の陸将補までなった人で、戦略・戦術の専門家らしい。この本は特にギリシャ・ローマ関係の戦いが詳細に解説されている。普通の歴史の本では、誰と誰がどこそこで戦いどちらが勝った、という事しか述べないが、この本では個々の戦いが具体的にどういう戦況で行われたかに重点が置かれている。

 例えばアレキサンダー大王ひきいるマケドニア軍が4倍ものペルシャ軍を破った「アルベラの戦い」。カルタゴのハンニバルがローマの大軍を破った「カンネの戦い」。ローマのスキピオがハンニバルを破った「ザマの戦い」。・・・などなど、それぞれ戦況がどのように進展してどのようにして勝敗が決まったかが詳しく解説されている。紀元前何百年の事なのに、第一段階、第二段階、第三段階・・・などと戦いの進展状況がわかるような記録が残っているという事もかなりの驚きだ。

 「エパミノンダスの斜向陣」「誘致攻撃」「迂回機動」「遮掩幕」「援護幕」「フェビアン戦略」などの軍事用語や、「主力の速度と警戒の度は反比例する」などの戦争現場でしか使わないような法則が出てくる。また文中では既知の事として語られているが、どうやら軍事の世界には「戦いの九原則」という物があり、それは「先制主導の原則」「目的追求の原則」「奇襲の原則」「警戒の原則」「戦闘力集中の原則」などであるらしい。さすがに軍事の専門家の書いた本である。

 古代インドや古代中国の話も申し訳程度出てくるのだが、古代中国や中世日本の戦争はそのほとんどが国内戦であり、そのような国内戦の教訓をベースに作られた兵法書は国外戦には役に立たないという。
 一方、カンネの戦いなどは第一次大戦の頃から研究され、今でも戦術の理想になっているのだという。

 全体の構成が唐突でアンバランスな感じで、読ませる書物というよりは研究家の書いたレポートのような印象だ。



「押井守全仕事(増補改訂版)」キネマ旬報社
 1996年に出版された同名の本に、最新作「アヴァロン」関係の内容を加えた物。「全仕事」と銘打っている割にはそれほど詳しい内容ではないのが残念。どちらかと言うと、関係者とのインタビュー記事がメインの内容だ。まあ、押井守ファンなら買っておきたい・・・という程度か。



「押井守 アヴァロン・メイキングブック・ムービーコンストラクション・クラスSA」メディアファクトリー
 押井守監督の映画「アヴァロン」(「アニメ以外」参照)のメイキング&研究本。300ページ近い厚さと圧倒的に豊富な図版類。全てのカットを収録したインデックスや、画像特殊処理の過程を見せる技術的な解説などなど、押井ファンならずとも是非手元に置きたい本だ。各シーンに対する解説文など、押井演出の解析手引きとして実に勉強になるなあ。定価3500円と少々高価だが、それ以上の価値あり。



「8時だヨ!全員集合伝説」双葉社
 私が子供の頃、土曜の夜は「全員集合!」であった。当時子供だった人ならほとんど例外なく見ていたのではないか?というくらいの定番番組「8時だヨ!全員集合」のプロデューサーだった居作昌果氏が自ら語る当時の苦闘物語。ドリフターズの裏話。番組のアクシデント。勝利と凋落。ああ、あの番組の裏側ではこんなに大変な状況だったんだなあ・・・としみじみ。



「世紀末アニメ熱論」キネマ旬報社
 長年アニメ雑誌で評論を書いてきた著者(氷川竜介)が、各雑誌に書いたアニメ論を集大成した物。特に富野監督との関係が濃厚で、「ブレンパワード」に関する記述には唸らせられる物がある。「ああ、あの場面にはそんな深い意味があったのか!」「俺もまだまだだな・・・」と思うことしきり。



「と学会年鑑2001」太田出版
 毎度恒例の「と学会」本。とはいえ、主要メンバー全員参加で「著者=と学会」という本は2年ぶり。

 「と学会」の例会では会員が発見・発掘してきた面白い物件を発表し合うそうだが、この本はその発表を再現する形式になっている。いつもの事ではあるが、「この人たち、いったいどこからそんな変な物を探してくるんだろうなぁ〜」「なんか、凄く楽しそうだなあ〜」という感じ。



「GREAT MECHANICS」双葉社、好奇心ブック(73)
 機動戦士ガンダムシリーズに登場した連邦軍の量産型モビルスーツ「GM(ジム)」に注目し、これまでは単なるやられ役でしかなかったGMが、実は兵器としてはかなり完成度が高いという研究。これを読むまで気が付かなかったけど、GMって最初のガンダムから「Zガンダム」「ガンダムZZ」「ガンダムF91」、さらには「Vガンダム」(初代ガンダムから数えて73年後の話)までその系統を追う事ができるんだねえ。知らなかった。俺もまだまだだな・・・。

 その他、「聖戦士ダンバイン」に登場したオーラバトラー、「装甲騎兵ボトムズ」に登場したアーマードトゥルーパーに関する研究も。これらのアニメは10数年前のアニメだけどいまだに人気が高い。最初のTVシリーズだけでなく、かなり後になってからもオリジナルビデオや小説なんかが出たのでメカのバリエーションが豊富で、研究のし甲斐がある。



「ソフトウエアの20世紀」翔泳社
 コンピューターは誰がどのようにして発明したのか? 最初にソフトウエア言語を考えた人は誰なのか? などという質問に答えるのは、意外に難しい。そしてそのような疑問を解決してくれる書籍は、これが意外に少ないのである。もちろん無い訳ではないのだが、私が知りたい部分とは範囲が微妙にズレていて、「これだ!」という書籍には巡り会えていなかった。しかし遂にそういう私の要求を満たす本が登場した。この本がそれだ。

 名前だけ聞くとソフトウエア関係だけの本のように聞こえるが、コンピューター自体の歴史や、その歴史背景なんかまでオタッキーに解説してあり、楽しく読む事ができる。まだ歯車式の機械しか無かった時代にコンピューターの概念を考案し、実際に作ろうとしたチャールズ・バベッジの話や、1970年頃までオフィスで使われていた手回し機械式の計算機「タイガー計算機」の話などまで載っているのが嬉しい。またアセンブリ言語、FORTRAN、Pascal、Cなどのプログラミング言語がどのようにして発展進化してきたかが、考案した人物や歴史的背景を絡めて解りやすく説明されている。勉強になるなあ。



「全ウルトラマン特撮研究(改訂増補版)」勁文社
 初代ウルトラマンとウルトラセブンを中心に、プランニング→撮影準備→本編撮影→特殊技術撮影→編集→パブリシティという製作の流れを追って研究した本。

 この本は1990年に「ケイブンシャ」ブランドで出版された「ウルトラマン・特撮の秘密百科」という本(写真右)の改訂増補版である。どちらもほとんど同じ内容であるが、「秘密百科」の方は基本的に子供向けという建て前なので漢字にルビがふってある。しかし書かれている内容はかなりマニアックで、子供向けとは言い難い内容だ。さすが、怪獣図鑑の老舗ケイブンシャ。

 例えば、初回放送当時は15分目のCMが無かったとか(当時、テレビ画面を直接撮影した証拠の写真が載っているのが凄い)、撮影はされたが省かれたシーンが存在し、それがどうして省かれたのか?とか、それまでにあった研究本でもほとんど語られなかったオタッキーな話が語られている。今回増補されたのは「ウルトラマン・グレート」以降、主にティガ・ダイナ・ガイアの新シリーズに関する部分で、それ以外の部分は体裁も含めてほとんどそのままである。


戻る