こんな本、買ってきました
(2012年、震災マンガ)



【大震災から1年】
 震災をネタに描かれたマンガがいくつか出ている。

 有名なところでは、

●しりあがり寿「あの日からのマンガ」
 真剣に震災(特に原発関連)と向き合ったマンガ。朝日新聞連載の4コママンガも合わせて収録。絵柄はいつものあの絵だが、そのメッセージは本物だ。

●とり・みき「とりったー」
 ツイッターをネタにしたマンガであり、別に震災マンガじゃない。が、執筆中に大地震が来たので、それをそのままマンガに描いた。「震災を描いたマンガとしては一番早かったかも」と言っている。

●鈴木みそ「僕と日本が震えた日」
 実際に三陸の被災地に行ってみた感想マンガも含まれているが、鈴木みその真骨頂は業界ネタにあり。

 当時紙やインクが不足して大変だったという出版業界の裏話や、出版社というのは「本を書店に委託販売してもらってる」という形式で成り立っているため、書店が被災して売れなくなってしまった本は、出版社側の損害になるという。このおかげで潰れる出版社もでるんじゃないかと・・・。

 あと、ネットで公開してた「放射線の正しい測り方」を収録。

 放射線は、測定器さえあれば誰でも簡単に測れるといモノではない。正しい知識、正しい測り方が重要だという。かなりタメになるマンガだ。


 あとマイナーなところでは、

●井上きみどり「わたしたちの震災物語」
 子育てマンガ「子供なんか大キライ!」をヒットさせた作者(仙台在住)が、子供を持つ母親の視点で描いた被災者マンガ。

 大人でも大変な避難所暮らし。そんな所で赤ちゃんが普通に過ごせるワケもなく、それはもう非常に大変なのだという。そこで活躍した、あるNPOが立ち上げた「赤ちゃん一時避難プロジェクト」の話とか、

 被災地におけるトイレ事情(大便小便は誰でもするので、深刻な問題)を何とか良くしようと働いているNPOの話とか、

 津波で職を失った主婦たちが、ミサンガを作って売る事で生きる意欲がわいてきた、という話とか、

 あの日石巻の石ノ森萬画館で起こった事とか、

 被災地で迷子になったペットを助けている動物愛護団体の話などなど、被災地で頑張っているNPOや団体に取材した話がメイン。よく取材していると思う。

 ちなみに、保健所で保護している犬は地震の前兆が分かるらしく、余震のちょっと前に一斉に逃げ出すという。しかし猫は感じないようで、いつもどおりだったという。

●ゆうみえこ「1年後の3.11―被災地13のオフレコ話」
 同じく仙台在住のマンガ家のマンガ。女性向け危ない系マンガ雑誌の「家庭サスペンス」に掲載していたマンガをまとめたもの。

 作者の家は「一部損壊」。実家(無人、猫の家になっている)は1階部分が津波で流され地域が「侵入禁止区域」に指定されてしまったという。

 ガソリンを2泊3日(車中泊)並んで手に入れ、実家に猫を救出しに行った話とか、

 仙台港にある倉庫が津波で流されて、倉庫内にあったカップ麺や缶ビールなどが流出。これを拾いに来る人がいっぱいいたという話とか、

 津波が押し寄せた時、電信柱に登って助かった人がいて、自分が助かったのは良かったが、見ている目の前で親子が津波に呑まれていった。その時のこっちを見ている目が脳裏から離れなくて辛いという話とか、

 自衛隊の救援活動は「任務」ではなく、要請による「奉仕活動」なのだという。で、生死にかかわる任務の訓練をしてきた隊員ですら、被災地のあまりの惨状に(ランドセルを拾い上げたら下に子供の死体が・・・とか)逃げ出してしまった隊員もいたという話などなど、シビアな話が多い。

●槻月沙江「震災7日間」
 これも仙台在住のマンガ家のマンガだが、上の3冊に比べると同人誌的な絵と内容。特にどこかに取材したというわけではなく、あの時自分に起こった事を描いたマンガ。

 この人、まだマンガ家としては「売り出し中」らしく、自身の「まんが道」的な内容が多い。震災時、すぐにネットで公開して、それで話題になったという事みたい。

[2012/03/18]


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