スイスは快晴でした

1994年6月、スイス


【1日目】(成田〜ジュネーブ)
 ブリュッセル行きの便がいきなり遅れる。11時発の予定がなんだかんだで15時に。飛行機はジャンボ機だが古ぼけていて、天井から水がポタポタ落ちてくるし、機内放送では葬送行進曲を流してるし、なんか不安・・・。

 ブリュッセルで乗り換えてジュネーブに着いたのは夜9時。ただしサマータイムであるのと緯度が高いせいで、まだ夕方であった。添乗員さんが「夜2時頃に目が覚めますが、がんばって寝て下さい」と言った。物凄く疲れていたので「そんなバカな」と思ったけれど、その通り目が覚めてしまった。さすがだ。


【2日目】(シャモニー〜グリンデルワルト)
 ジュネーブからバスで国境を越えてフランスに入り、モンブランの麓の町シャモニーに到着。日本人観光客が多く、日本語の案内表示も見られる。

 ここからロープウエイで一気に3842mのエギュドミディ頂上まで登るのだ。耳が痛くなり、空気が薄いのでフラフラする。まったくどうやってこんな所に作ったのか、あきれるほど凄いロープウエイである。頂上からはモンブランの前峰が目の前に見る事ができる。天気も最高。

 ジュネーブ近郊のレマン湖周辺はほとんどが牧草地で、家はみな同じ様式。集落ごとに教会の塔が見える。ジュネーブに戻り、市内の日本人向け免税店に立ち寄った。ここは日本語日本円が使えるので、日本に居るのと同じだ。金の延べ棒そっくりのチョコレートを買った。

 ローザンヌ〜モントルー〜インターラーケンと走り、目前にアイガー北壁を望む町、グリンデルワルトに到着。ホテルの前がそのまま登山電車の駅になっている。駅といっても日本のようなプラットホームが無いので、道路と駅と広場の区別がつかない。

 夕食は名物のミートフォンデュ。生肉を長細いフォークに刺して、熱い油に突っ込んで揚げ、タルタルソースのようなソースをつけて食べるのだ。油がジュウジュウはねてけっこう危ない。ソースも付け合わせもみんなスパイシーで、全体に塩味が強く、あまりおいしくなかった。

 町はホテルと観光客相手のレストランやおみやげ屋が軒を連ねているが、どこか田舎町っぽい静けさがあって、落ち着きがあった。


【3日目】
(ユングフラウヨッホ〜ツェルマット)
 夜明け前に外を見ると、月明かりを逆光にアイガー北壁がまさに巨大な壁となって迫ってくる。凄い迫力だ。明け方には朝焼けの赤がアイガー頂上を染めているのが見えたが、10分も経たないうちに普通の色になってしまったが。

 朝食はチーズ、パン、ハムのバイキング形式。さすがに種類が豊富で、牛乳も大変おいしかった。まさに本場ぁーーーっ!て感じ。

 登山電車で山に登る。つんのめるような急勾配だ。途中クライネシャイデック駅で乗り継いでさらに登る。アイガーのどてっぱらに長い長いトンネルが掘ってあり、そこをゆっくり登って行く。

 終点ユングフラウヨッホ駅は標高4158mのユングフラウの八合目てな感じの所にあるトンネル駅で、トンネル内に途中2ヶ所停車場がある。

 最初はアイガーワント。アイガーの壁に窓が開けられており、そこから外を眺める事ができる。次がアイスメール。同じように窓が開けられており目の前に氷河を眺める事ができる。この2つの停車場はそれぞれ5分間しか停まらないので、発車に遅れると氷点下の中で次の列車を待たなければならないのだ。

 ユングフラウヨッホ駅が近くなると、数カ国語でユングフラウヨッホの解説が放送される。その中には日本語もある。

 ユングフラウヨッホ駅は工事中で、粉塵で煙っていた。ここからさらにエレベーターで登った所がスフィンクスと呼ばれる展望台だ。その日の一番乗りでしかも晴天! いかにもアルプスぅ〜っという感じの山々がそそり立ち、そして図鑑でしか見た事がなかったでっかい氷河がウネウネとうねっている。その後、氷河をくり貫いて作ったという「氷の宮殿」や、「プラトー」と呼ばれる崖を回った。ここも日本人観光客が多く、日本の郵便箱(昔からある赤い円柱型のやつ)まであった。

 下山途中、トンネルから出てすぐのところの駅(アイガーグレッチャー駅)で降車し、クライネシャイデック駅まで歩いて降りた。氷河のカールの縁をたどって降りるのだが、左右とも急斜面で絶景だが非常に恐い。

 クライネシャイデックで昼食。どこでもそうだが飲み物は別途に頼まなければならない。ビールやミネラルウォーターを頼んだのだが小銭の持ち合わせが無く、札で払おうとしたらボーイに嫌な顔をされてそのままほっぽとかれてしまった。どうにもならないので踏み倒して出て来た・・・。

 下山後はラウターブルンネンという所でバスに乗り換え、次の目的地ツェルマットへ向かった。途中、人が乗った車をそのまま乗せて走るカートレインで長いトンネルをくぐって行く所があった。列車の最後尾に乗り込み口があって、そこから列車の中を突き当たりまでそろりそろりと車を運転して乗せるのだ。幅がけっこう狭いので、ドライバーが下手だとガリガリ擦ってしまいそうだ。ちなみに降りる時は最前に降り口ができるようになっている。

 さて、目的地ツェルマットはマッターホルンの麓の町で、ヨーロッパでも有数のリゾートだ。ツェルマットでは自動車が使えない。道路はあるのだが地元の人と特別の車両以外は自然保護のために入れない事になっている。したがって手前の町テッシュから鉄道で行かなくてはならない。

 さすが大リゾート。ホテルがいっぱい(もちろんスイス風の作り)。小さな電気自動車と馬車が走っており、道に馬糞が転がっている。ホテルは正面にマッターホルンが見える広い広いテラス付きだった。部屋も広くて快適。


【4日目(ツェルマット〜ゴルナグラート)
 登山列車で標高3135mのゴルナグラートへ登った。ここからはマッターホルンが目前に見える(こればっかりだが本当だから仕方が無い)。眼下には氷河。ここらは山スキーのメッカらしい。目を山に転じれば山ヤギが崖を登っている。

 駅近くにはセントバーナード犬がいて写真のモデルになってくれるのだが、プロなので営業でない時は看板の下に隠れている。無理に撮ろうとすると写真屋の兄ちゃんに怒られる。

 杖をついたヨロヨロした、A・C・クラークをさらに老けさせたような白髪の爺さんが、一人で一歩一歩踏みしめながら展望台まで登って来た。あんな状態で展望台まで登ってくるとは只者ではないと見た! 後で見たら展望台近くのテラスで、やはり白髪の婆さんと並んで、何か飲み物を飲んでいた。なんかヨーロピアンな老後って感じ(^_^)

 ゴルナグラートから一駅おりたローテンボーデン駅で列車を降り、次の駅リッフェルベルグ駅まで歩いた。途中に小さな泉があり、それにマッターホルンが映って見える。通称「逆さマッターホルン」である。これが見えるのは、天気の良さと風の無い事が条件で、見える事は珍しいらしい。しかし我々は見れた! 大ラッキーである。泉の近くの日陰ではヒツジの群れが休んでいた。

 ここらの岩はキラキラ光る小さな粒子を含んでおり、泥にもそれが入っているため転ぶとそのキラキラが残り、目立つのだ。泥の所で転んでしまった。

 リッフェルベルグ駅からツェルマットまで戻る途中、線路工事をしてて、乗客は全員線路を歩いて下で待機している列車に乗り換えた。

 下山したらヘリコプターでマッターホルンを見に行こうという提案が挙がった。山岳救助のためのヘリが、暇な時は営業してるのだという。料金は一人当たり1万2千円くらい。4人乗りの小型ヘリで氷河の上を飛び、マッターホルンへ。「わーっ、ぶつかるぅ!!」というほど頂上に近づく(遠近感がよくわからない)。いやぁ、凄い迫力だった〜。

 その後はツェルマットで自由行動。ヨーロッパ人は犬を連れてリゾートに来る。そういえば空港でスポーツバッグに犬を首だけ出して入れて、持って歩いてた人を見たが、あのまま犬も飛行機に乗れるのだろうか?

 ここらの家は屋根を、特産の平べったい岩を瓦にしてふいている。その平べったい岩を床の下の柱の途中に挟んで、「ネズミ返し」にしている古い倉庫もある。

 スイスの町では、小さな十字架が立っているのをよく見かける。日本で言えば道端のお地蔵様といったところか。この町ではその他に、恐ろしげな妖怪妖精の顔の木彫りが立っているのを見る事ができる。たぶん土着の素朴なおまじないなのだろう。お土産屋のオヤジが自分で彫ったと言う木彫りの楊枝立て(ペン立てかも?)を買った。

 夕食のポトフもやはり塩味が濃かった。隣の新婚カップルが地元ビールのトレードマーク入りのグラスが欲しいと言って、店の人に頼んで譲ってもらっていた(有料)。


【5日目】(氷河特急〜ルツェルン)
 ツェルマットから氷河特急と呼ばれる名物列車でアンデルマットまで進む。ここらでは、いわゆる登山列車でなくとも急勾配の部分を登るための歯車式車輪を装備していて、必要な時だけ歯車を使って登坂する。ちなみに車内は禁煙席と喫煙席をガラスで仕切られている。

 車内でだけ売っているという「傾いたワイングラス」を売りにきた。なぜ傾いているかと言うと、急勾配で車両が傾いていてもこぼれないという事らしい。でもそんなのいらないので買わなかった。

 窓の外には、山々を背景にのどかな牧草地や畑が広がっている。しばしば、使われている様子の無い滑走路も見られる。それは非常時のための軍事施設なのだという。のどかなだけではなかったのだ。

 アンデルマットでバスに乗り換え、ルツェルンに向かう。スイスには26の州から成っていて、それぞれに紋章の旗がある。町に入るとその地方の紋章の旗がたくさん掲げられていて、とってもヨーロピアンな感じ。

 ルツェルンは暑かった。これまで高原の涼しい所ばっかりだったからなぁ。石畳、州の紋章の旗、カフェテラス、日本人観光客、スリに注意の看板・・・。

 自由行動でカペル橋(木造では欧州最古の橋)や、旧市街城壁を見てまわった。カペル橋は屋根付で、川に対して斜めにかかっており、しかも途中で曲がっている。一見、古い長屋のようである。城壁の方は一部しか残っていないが、上を歩く事ができる。ダンジョンRPGに出てくるような狭い階段を登って、上に出てみたら、城壁のすぐ外に小さな牧場があった。位置的にはけっこう大きい街の中心部なのにである。たぶん城壁の外に街が広がる前は、城壁の外はみんな牧草地だったのかもしれない。

 夜、カジノ&レストラン「LE CHALET」で郷土芸能(ヨーデルなど)を見ながら、名物料理のチーズフォンデュを食べた。これはワインと一緒に熱して溶かしたチーズに、細長いフォークに刺したパンを入れてチーズを絡ませて食べるというものだ。前に出たミートフォンデュはおいしくなかったが、これはおいしかった。しかしその後で出たモツ煮みたいな料理は、やはり塩辛くてつらかった。

 ドイツのビアホールを彷彿とさせる会場は、いろんな国から来た団体客でいっぱい。アメリカ、ブラジル、韓国、インド、タイ、イギリス、スペインなどなど10数カ国、全部で200人近くいる。そんな時、ステージの進行役のおばさんが国を指定して代表をステージに上がらせ、アルペンホルンを吹かせ始めた。

 日本も指名され、日本人は我々だけだったので、隣の新婚カップルがステージに上がった。しかし「実はもう一組ハネムーナーがいるんですよ」などと余計な事を言った人がいて、俺達もステージに上がらされてしまった。聞いてないよぉ〜(^^;

 一人一人スイスの帽子をかぶらされてホルンを吹かされるのだが、俺はぜんぜん音が出ない。会場がドッと沸いた。大受けである(^^; 三度目の挑戦で「ブオォォ」と音が出て、さらに大受け。帰りにどこかのねえちゃんに「Very good !」などと励まされてしまった。


【6日目(ルツェルン〜チューリッヒ)
 朝、出発前にホテルの近くの古そうな教会に散歩に行った。教会を囲む塀の壁面と床の部分が墓標になっている。意味ありげなレリーフ(嵐の海の中の船の上に立つ男とか、友達の手を取って助けているらしい男など)が墓標になっているのもある。RPGでお馴染みの「R.I.P.」(安らかに眠れの意)とか、「A・Ω」(神を暗示する文字)と書かれた墓標があった。墓参りに来たらしい家族が墓標を探していた。

 ルツェルンを立ち、名所「ラインの滝」に向かう。ラインの滝はライン川が滝になっている所。落差は小さいが、広い川幅全部が滝になっているので迫力がある。観光客がたくさん。

 チューリッヒで昼食。市内の中華レストランで中華料理。久しぶりのごはんだ。しかしここも少し塩味が強いような気が・・・。

 午後は自由行動。チューリッヒの目抜き通りを散歩。さすがに活気があり、所々にパフォーマンスをする人がいる。

 突然暴走族のようなクラクション音が鳴り響いたと思ったら、ゲイのパレードであった。いかにもゲイという連中がゾロゾロ愛想を振りまきながら(?)歩いて行く。かなりの人数(数百人)である。シンボルらしい赤いリボンを配っていた。

 公園で蚤の市をやっていた。何でこんなものを?と思うようなガラクタを売っている。(古い手紙、ナンバープレート、真空管など・・・)

 石畳の路地を入って行くと奥から音楽が聞こえて来た。ねえちゃんがストリートオルガンを演奏していた。大道芸人である。

 ニョーボを見失ってしまった(汗)。しばらく探しても見つからなかったが、集合場所はわかっているし、地図も持っているはずなので心配しないで買い物する事にした。むしろ自分の方が地図を持っていないので、ちょっと不安である。

 ここらの店は16時閉店で、きっちりその時刻に店を閉めてしまう。客がいてもである。昼休みも同様。お土産を買って集合場所に行ったら、「奥さんをほおって自分だけ買い物ですって。まぁ、なんて冷たい御主人なのかしら・・・」という視線が痛い(^^; 違うっ! 違うんだぁ〜〜〜っ!!

 ホテルは4つ星のスイスホテル・インターナショナル。さすがに良いホテルだ。お土産を買いそびれたニョーボは、駅前のキオスクでチーズを買ってお土産にした。


【7日目】(ブリュッセル)
 いよいよ帰る日だ。朝、ホテルの回りを散歩したらハトが潰れて死んでいた。飛行機が落ちるという前兆だろうか。不吉だ・・・。

 ブリュッセル乗り継ぎ便で成田へ。ブリュッセルでの待ち時間が3時間もあるので、電車で街に出た。その前に空港のトイレで用をたした。トイレを出ようとしたら、出口で太ったおばさんが待ち構えていて、何やらチップを要求している様子。チップが必要なのは個室を使う女性だけで、男性は取られないと聞いていたが・・・。

 いずれにしても空港に着いたばかりなので、現地通貨に両替してない。したがって小銭など持ち合わせなどあるはずもない。「I have no money !」などと主張してもみたが、通じてないのか納得してるようには見えない。絶体絶命である。しかしこればっかりはどうしようもないので、隙を見て脱出した。追いかけてこないところをみると、どうやら助かったようだ。

 街に出ようと空港駅で列車を待っていると、遠くから「オ〜レ〜、オレオレオレ〜・・・」というJリーグのテーマ(?)が聞こえて来た。あの歌は世界共通なのか? どうもこの日、ワールドカップでベルギーが勝ったらしいのだ。なんか、駅で六甲おろしを歌う阪神ファンを思い出してしまった。

 有名な小便小僧を見に行った。さすがに観光客でごった返していた。ここでもお土産のチョコレート(小便小僧型)を買った。と、道路に潰れて死んでいる鳥がっ! 不吉な・・・。

 成田行きのジャンボは来る時と同じで、天井から水が垂れるし、放送では葬送行進曲を流していた。もうダメだ。しかし無事に成田に着いた。良かった、助かったのだ。ホッ。


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