素朴な旧街道を行く

2001年4月、岩手県の某旧街道


 親父の葬式の後処理のために実家に行く用事があり、岩手に行ってきた。ちょっと時間に余裕があったので、国道4号線とは別の「旧街道」という道を通ってみた。

 明治になって国道4号線が作られた時、この地方では江戸時代からあった奥州街道とは別のルートに道路が作られたため、旧街道側はあまり開発されず比較的昔の面影を残しているという。(右の写真は旧街道に残っている一里塚)

 私はこの地方で生まれ育ったのだけど、こんな旧街道があるなんて、つい最近まで知らなかった。地図を見ていて発見し、その後で実際にクルマで行ってみたというワケ。

 別に古い宿場街がある訳ではなく、細い道と小さな集落、そして高原に農地が広がるだけの道程で、特別な物は何も無いのだが、そこがマニアにはたまらない。(また出た!「寂しい地方」マニア!!)

 北上山地の高原地帯に作られた農地は、スケールの大きさではかなわないけど北海道の美瑛を思わせるような光景だ。観光客なんか一人もいないから、のんびり気分を満喫できる。たま〜に地元の人とすれ違うと、思わず「第一村人発見!」とかつぶやいてしまう。そんなのどかな街道だ。

 さて、国道4号線に戻っていよいよ私の故郷に入るという辺り。道路脇に「くしもち」の看板が。「くしもち」とは文字通り串に刺した餅の事なのだが、一般に言う餅や団子などとはちょっと素材が違う。

 形は平べったい円盤型(下左の写真)。これを割り箸に刺して特別な味噌を付け、炭火で焼いた物だ。実家の近所では「味噌付け餅」と呼んでいるが、ここでは「くしもち」と呼んでいるようだ。味の方はいわゆる「美味し〜い!」と言う物ではないが、かざらない素朴な味がまたマニアにはたまらない。(素朴物マニア)

 店内ではおばあちゃんがのんびり炭火で焼いている(下右の写真)。昔ながらの光景が、なんだかホッとさせてくれるんだよね。1本60円也。
 さて、この店頭の張り紙に「豆ストギ」というのがあるが、これもまたこの地方独特の食べ物だ。豆を煮てすりつぶした物を粉と一緒に練って棒状にした物で、生のまま輪切りにして食べる。あまり味付けされておらず、豆の味とほのかな甘味がする、実にかざらない味。素朴な食べ物だ。お茶受けとして食べる事が多い。量産品ではなくて、農家のおばちゃんが自宅で作り、露店で売っていたりする物だ。したがって保存料とかの添加物を加えていないので賞味期限が非常に短い。そういう意味も含めて季節限定の食べ物で、冬にしか食べられない。地元の小さな商店で売っている事もあるが、欲しい時に必ず買えるという物ではない。そういう意味ではけっこう貴重な食べ物だ。

 これが豆ストギの売られている時の姿。練った棒状そのままの形で売られている。

 古語辞典を調べると、「しとぎ」という昔の食べ物が出ているが、これが「ストギ」の事だという。まさに日本古来から伝わる食べ物なのだ。

 棒状の豆ストギを輪切りにして食べる。けっこうお腹にたまるので、一度にたくさんは食べられない。切り餅のように焼いて食べる場合もある。

 豆ストギは冬にだけ作られる物なので、春〜夏には売ってない。駅のみやげ屋などで「すとぎ」という名前のお菓子を売っている場合があるが、それは本物のストギではなくて、お菓子メーカーがストギに似せて作ったお菓子である。本物のストギを知っている者としては、あんまり許したくない。


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