ウィッカーマン

怖くないホラー映画、しかし美しい。


 これは73年製作のイギリス映画で、分類としてはホラー映画だと思うけど、ショッキングなシーンは出てこないので全然怖くない。日本で言えば「世にも奇妙な物語」みたいな雰囲気。一般には「カルト映画」「怪作」などとして知られているようだが、私としては「小粒で地味だがピリリと辛い傑作」の称号を与えたい。つまり、かなり面白かった。

 イギリスにサマーアイル島という小さな島があって、そこは全島がサマーアイル卿の領地(私有地)だ。島民は名産のリンゴの栽培と漁業で暮らしを立てている。その島の女の子が行方不明だという事で、調査のために本土から警部補が島に向かう。この警部補が島で出会う不可解な出来事がドラマの流れになっている。

 島の住民は外見的には普通の人々のように見えるが、実は原始宗教崇拝している(自然や性的シンボルを崇拝している)。特に性に対してオープンらしく、夜、野外で公然とセックスしてたり警部補がいきなり夜這いをかけられそうになったりする。教会は廃墟になっており、敬虔なクリスチャンである警部補は驚き怒り、戸惑い、うろたえる。島の原始宗教のエロチックさや性への奔放さが美しく描かれており、邪教とか、まがまがしいといった感じは無い。むしろ素朴で楽しそうに描写されている。ここがミソ。

 さて、島民は行方不明の女の子なんか元々存在しないかのような態度で、その子の母親や妹までもが知らないと言う。しかし調べる内にその女の子が確かに存在したという物的証拠が出てくる。一体どういう事なのか・・・。まさか原始宗教の儀式で生け贄にされたのか?と疑い出す警部補。強制的に捜査を続ける警部補が見た物は・・・というストーリー。

 おそらく敬虔なキリスト教徒にはストレートな意味でショッキングな内容なのだろう。が、普通の日本人にはあまりショッキングではない。むしろ島民の素朴でおおらかな生活の方が、警部補が演じている所のキリスト教的モラルにしばられた人よりも自然で良いのでは?と感じてしまう。ここ。これが敬虔なキリスト教徒には怖いのではないか?

 なお、このサマーアイル島は実在する島で、そこでロケをして作った映画との事。劇中に登場する儀式も実在した物らしい。そして本当に領主がいるというのも古い伝統がある英国っぽくていいね。それにしても、こんな内容なのによくロケを許可したなあ。映画では警部補の気持ちも島民の気持ちも両方理解できる所があるが、ロケを許可した人の気持ちはちょっと理解できない所が・・・(^^;


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