兄弟拳バイクロッサー

お気楽な悪の組織が微笑ましい


 知っている人はよく知っているが、知らない人は全然知らないマイナーな特撮ヒーロー。

 兄弟が2人でヒーローという点では「キョーダイン」を彷彿とさせるが、この際そんな事はどうでもよい。失礼承知で言って、低予算&低次元なこの番組が特撮ヒーロー史上で今でも語り草になっているのは、この番組が画期的なほど笑える番組だったという理由からに他ならない。

 特撮ヒーロー物では当然、悪の組織やら怪人やらが世界征服をたくらむ訳だけど、もちろんこの番組にも悪の組織は登場するのだけれど、この目的が非常に変わっている。

 それは「子供を泣かす事」

 いや正確に言えば、子供が泣き叫ぶ声を聞くとダイヤモンドを出してくれる怪しい像があって、ダイヤ欲しさに子供を泣かせるという訳だ。子供を殺すとかじゃなくて、あくまでも怖がらせて泣かすという点が重要。

 そんな程度の連中なので、口では「最終目標は世界征服!」みたいに言う事もあるけど、それはあくまで建前。本音としては目の前の利益とか、単に自分が楽しいからという理由で悪事を働いている。ああ、楽しい「悪の組織」だわぁ〜。

 つまり、邪悪度という点で言えば、他の番組の悪の組織とは比べ物にならず、無邪気と言ってもよいくらいであった。むしろ俺も仲間に入れてもらいたいくらいだ(^_^;

 例えばある回では、

 「子供はお菓子が大好き」
 →「お菓子が無くなれば子供は泣く」
 →「街中のお菓子を全部奪ってしまえ!」

 という具合だ。

 戦闘員が町の家庭一軒一軒からお菓子を盗んで回るシーンはもう腹が引きつるほど笑わせていただきました(^_^;;;;


 昔の仮面ライダーなんかでは、悪の組織が毎回毎回色々な悪事をはたらいていたけれど、今になって考えてみると、もう現実のテロがあれと同じ事をやっているワケですよ。毒ガスでの無差別殺人あり、旅客機でビルに突っ込むあり・・・。マジで「悪の秘密結社」=「テロ組織」という現実になっちゃってしまっている。そんな現代だから、劇中の悪の組織が昔ながらの悪事をやっても面白くないというか、シャレにならないじゃないですか。

 テレビの中の「悪の組織」はもっと凄い、現実を超越した悪事をやってもらわないと、超人ヒーローの活躍が引き立たないワケですよ。(最近の仮面ライダーではいわゆる「悪の組織」が出てこないし、登場する「怪人」の悪事も昔の物のとはだいぶ趣向が違ってきている。その根本的な理由はここら辺にあると思う)

 だから、そういうすさんだ現代には、こういうお気楽な「悪の組織」の話を見てなごみましょうや。笑えますよ。ホント。


 この番組の前の番組「星雲仮面マシンマン」も悪い博士が「(個人的に)子供が嫌いだから」という理由で子供を狙うというストーリーであった。だから「バイクロッサー」もそれを継承した路線というワケであるが、より面白さに徹底しているように思った。

 昔の特撮ヒーロー物は今と違って100%子供向けの番組であった。そして同じ子供向けの中でも、低予算で内容がどんどん陳腐かつ幼稚になって行った時期があった。悪の組織が狙う対象は東京壊滅とか要人暗殺とかではなく、手近な一般市民になり、幼稚園バスになり、砂場で遊んでいる子供になり・・・という具合にどんどんスケールダウンして行った時期があったのだ。これで真面目なドラマをやるのは最初から無理な話であり、ファンタジーギャグ路線になったのは自然な流れだったと言えるだろう。

 また、それ以前から「ゴレンジャー」や「ジャッカー電撃隊」などで”真面目な顔をして凄く変な事をする”というシュール爆笑路線が完成されていたので、その流れを汲んだという事もあっただろう。

 こういう幼稚化路線を逆手に取ったというか、開き直ったというか、幼稚なら幼稚の中で面白さを追求した物になっているのが「バイクロッサー」だったと思う。

 主人公である水野兄弟が、どうしてバイクロッサーになったかとか、悪の組織側の背景なんかが良い具合にテキトーで、おとぎ話的にファジーなのが良い味を出している。

 また、ある意味「ヤッターマン」的な悪役主役な面もあって、悪の組織のボス、ドクターQ役の潮健児氏の魅力(悪役なんだけどどこか愛嬌があって憎めないキャラ)による所も大きかった。

 ある回で、記憶喪失になったドクターQが(いつもとは正反対の)優しい子供好きのおじさんになってしまうという話があった。この回で見せた子供に向けた笑顔は本当に良かったなあ・・・。潮健児氏はこの手の役が本当に好きだったんだと思う。

[2005/05/07]


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